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「あなた、不倫しても離婚はしたくないっていう最低な男のこと、どうしてそんなに好きなのよ」
三船七海の真意を探るべく、春奈は質問をする。
「それは、達彦さんと結婚しようとしている春奈さんならよく知っているんじゃないですか」
三船七海は口をとがらせる。ようやく店員が持ってきたコーヒーのカップが熱く、思わずソーサーに戻した。
「別れさせようというなら、こちらの質問くらい全部答えたらどうなの」
春奈は苛立ちを隠せなかった。目の前にいる謎の女に、どうしてこんなに心をざわつかされているのだろう。
「そうですね、時間もないですが。達彦さんって、子どもらしさを忘れていないところがあるっていうか無邪気なところがあるじゃないですか。そんなところとか、奥さんよりも好きって嘘でもそんな甘い言葉を言ってくれるところとか……」
三船七海はそこまで言って口を閉じた。まずい、という顔をしていることに余計に腹が立つ。たしかに達彦は子どもっぽいところがあるし、甘い言葉を吐くように言ってくれる。春奈も最初はそんなところが好きだった。けれど……。
「子供っぽいところは、後々嫌になるかもしれないわよ。なんにでも興味を持つと、その分だけお金は使うし飽き性だからものは溜まっていくし」
三船七海の顔を見ると、口をぽかんと開けていた。こんな顔もするのね、と思わず笑いが込み上げてきた。
「笑わないでください、春奈さん。いや、そんなに嫌ならなおさら結婚なんてやめた方が」
三船七海はすかさず突っ込んでくる。
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