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「とにかく、春奈さんは私の言っていることが本当であれば達彦さんと別れてくださいね」
三船七海はグラスに残っていたアイスティーをずずっと飲み干した。春奈は大きくうなずく。
「ここのお会計は約束通り」
三船七海は、財布からさっとお札を出した。少し多い。
「こんなに」
「いいんです、私迷惑かけてしまいましたし。何があれ、不倫は許されることじゃない。それはわかってた。だから不倫を許さない春奈さんは、それをしない素敵な旦那さんを見つけてください」
三船七海はそう言って立ち去ろうとした。なぜか、彼女がとても強い女性のように見えてきたのが不思議だった。
「待って」
春奈は三船七海を呼び止めた。
「なんですか」
「あなた、どこの支店なの」
「丸が丘支店です」
三船七海はふふっと笑ってそのままどこかへ消えてしまった。きっと、私が今彼女に会いに行ったところで彼女は私のことを認識しないのだろう。けれど……。丸が丘支店、ね。春奈はメモ帳にそっと書き記した。
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