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帰宅
春奈は帰宅後、先ほど三船七海に言われたことを思い出していた。
「社内不倫、か」
もはや、彼女の話していたことを疑っている自分はいなかった。後は、スーツの内側から証拠を確認するだけ。
「せっかく20代のうちに結婚できると思ったのに」
春奈は、20代のほとんどの時間を浮気性な元カレに費やしてしまった。
一度浮気を許してしまえば相手はつけあがるだけ。そんなことにも気づかずに、何度ももうしないという言葉を信じていた。優しく抱きしめてくれる目の前の彼を信じていた。いや、信じようとしていたのだ。
気づけば、一度許したこと自体が彼に対する執着へと変わっていった。
ふと、春奈は時計を見上げる。まだ15時。
「あ、昼ご飯食べそびれたじゃない」
春奈はため息をつく。とりあえず、と家にある食パンをトースターの中に放り込む。
「浮気しない男なんていないのかもね」
チン、トースターの鳴る音を合図に冷蔵庫へ向かいバターを取り出す。
浮気しない男がいないわけではない、そんなことは知っている。
しかし、こうも浮気する男が続くとなると、春奈の男運が悪いのか、はたまた春奈自身がダメ男製造機なのか……。
認めたくはないが、どちらかなのだろう。
バターを食パンに伸ばしていくと甘い香りが漂ってくる。席に座り、食パンを口にする。……おいしい。春奈は、昔から食べ物を口にすると気分が落ち着くのだった。
これからまた太りそう。
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