出会い

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出会い

「私、達彦さんと不倫するんです」 春奈の前に突然現れた女はそう言った。達彦というのは、春奈が明後日に籍を入れる予定の彼氏のことである。 「は、ばかなの?」 思わず口から出たあまり上品でない言葉に、自分で驚きながらも彼女をじろりとにらみつける。なんなんだこの女は。ピンクのハイヒールにふわふわ巻髪、それに目もくりくりとしていて達彦のタイプの女であることには間違いない。達彦の元カノもたしかそんなタイプだったと聞いている。だが、それ以上に達彦は私のさばさばとした中身を好きになってくれたのだ。結婚相手に求めるのは、中身だからと男友達も口を揃えて言っていた。その面で、春奈以上の女はいないよ、と。 「私、未来から来たんです。信じてください」 「なに言っているんですか」 春奈はまた女を突き放した。 「カフェで話しましょうよ。こっちがお金持ちますから」 女はそう言うと、黒いブランドものの長財布を出してひらひらとさせた。春奈にとって、カフェ代くらい痛くもかゆくもない。なのに、話を聞く気になったのはなぜだろう。興味、だろうか。
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