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はっと脳裏に思考が弾ける。
"念"はヒトの陰の気。壱袈はそう言っていた。
だから同じ"陰"である自分は、祓えずに散らすのだと。
いつだかの雅弥とカグラちゃんの言葉が駆け抜ける。
――この鈴には、お祖母ちゃんの"護り"の気が込められている。
「……っ!」
イチかバチか。
立ち止まりスマホをポケットから引き抜いた私は、鈴を掌に乗せ光を子狐ちゃんの鼻先に寄せた。
そうだ。しかもこの鈴は、カグラちゃんの力を分けてもらった"護り"の子。
神は陽。なら――!
「お願いっ! この子を守りたいの!」
力を貸して……っ!
そう、叫んだその時。
「なん、と……っ!?」
壱袈の驚愕が轟く。
私はというと、声も出せずにいた。
鈴から発された淡い光。
それは私の掌どころか全身を包みこみ、まるで"念"との間に薄い膜が出来たよう。
「こ、れは……?」
やっとのことで、戸惑いを零した刹那。
力なく伏せられていた耳がピクリと動き、子狐ちゃんの瞼がゆっくりと開かれた。
「子狐ちゃん……!」
歓喜の声を上げる私に、子狐ちゃんが顔を起こしてキュウと鳴く。
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