『姿の見えないストーカー』に追われています

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「どうだい? この後は二人で、場所を変えてもう少し話しをしたら」  空気の読めない部長と同じく「いいね」と乗り気な孝彰さんに、「食べ過ぎてしまったので」と断りをいれ、計画通りそそくさと帰宅した私は、その休み明けに早速とお断りの返事を告げた。  それが、三日前。  その翌日、部長は私の顔をみるなり朝の挨拶もすっ飛ばして、 「いやあ、息子が残念がっていてね。何が気に入らなかったんだい?」  いや、何がって全部ですよ。  そんな本音はもちろんきっちりと心に秘めて、当たり障りのない言葉でかわした翌日。  同じように朝一番から私のデスクにやってきた部長は、 「それがね、ずっとキミの事ばかり考えてしまって、仕事が手につかないそうなんだ」  私はまったく浮かびませんけどね。……って、だめだめ。  そう自分を宥めて、これまた冗談めかして笑って凌いだ。  ……からの、今日はこれ。  三回目。しかもデスクではなく、会議室へのお呼び出し。  こんなに拒否しているのに、よくもまあ、もう一度会えだなんて。 (ほんと、空気読めないっていうか、自己中心的というか……)  うん、やっぱり無理。
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