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数メートルある大きな鳥居が視界に入った。亀戸天神社だ。
そう認識した途端、ふっと妙な気配が消えた――感じがした。
(路地を曲がった? ううん、まだ油断は禁物)
目的がわからないのだから、警戒は最大限に。
相手は気を緩んだ隙を狙っているのかもしれないのだから。
その後も緊張感を保ちながら歩き続け、私は無事、今夜も家であるマンションの一室に辿り着いた。
施錠はしっかりと。カーテンは朝から開けていない。
電気を点け、通勤バックを置いた私――柊彩愛は、緊張を解いて「あー! つっかれた!」と大の字でベッドに倒れこんだ。
「もー! なんなのよ毎日毎日っ! これで連続三日目なんですけど!」
異変に気が付いたのは三日前。
初めは猫でも付いてきているのかと思っていたけれど、二日目にして考えを改めた。
だって、時間変えても付いてくるなんて、野良猫にしては執着が過ぎる。
餌をあげるどころか、顔すら見た事ないのに。
「やっぱりストーカー……? ホント勘弁してよ……」
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