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「個人的な趣向で放置しているというのなら、好きにしろ。だがな、俺を巻き込むな」
「ちょっ、ちょっと待ってよ! 急になんの話?」
怒りの滲む声で抗議してくる男に、私は混乱したまま「すとっぷ、すとっぷー!」と静止をかけた。
「祓えの力? 個人的な趣向? ちょっと、何を話しているのかさっぱりなんだけど!」
「……は?」
「いや、は? ってソレこっちが言いたいんだけど……」
なんなの、コイツ。
人違い……なのだろうけど、それにしたって随分と妙すぎる。
(……念の為、不審者として警察に届けておくべき?)
そんなことを考えていると、男が慎重な足取りで、階段を二つほど降りてきた。
月光の影が移り、不明瞭だった男の顔が青く浮かぶ。
――若い。
学生とまではいかないが、私よりいくつか下といった風貌だ。
品よく整った顔立ちをしているけれども、眉間に刻まれた不機嫌の証が、鋭い目つきと相まって印象を最悪にしている。
彼がもう一歩を降りると、街頭の微かな光を拾った瞳がすらりと光った。
……"狩る"側を彷彿させる、鋭利な目。
けれどどこか不思議と、綺麗だと思ってしまうような――。
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