『姿の見えないストーカー』に追われています

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「どうしても彩愛さんに会いたくてさ。俺にここまでさせるなんて、なかなか罪深いよ?」 (しーらーなーいーしーーーーっ!!)  もう、いっそのこと勘弁してくれと泣き叫んでしまいたい。  でも出来ない。だって私は、大人だから。  嫌悪感に強張る頬で無理やり笑みをつくった私は、上体を引いて囚われていた髪を逃がした。  そのまま自席で出来得る最大限の距離をとる。 「ええと、先日の件は部長にしっかりとお断りのお返事をしたはずですが……?」 「うん、聞いてるよ。けど俺はまた会いたいって思ったし。いくら頼んでも駄目だったって親父が言ってたからさ。やっぱり人づてじゃ、本気度が伝わらないのかなって。だからこうしてわざわざ、俺が直接お誘いに来たってわけ」  職権乱用。迷惑千万。  どうしたらそんなに、自分に自信が持てるのだろう。  ついでに一番大事な相手の気持ちは、まるっと無視ですか。  拒絶されているのだと微塵も気付いていない態度に、全身全霊で引いていると、 「っ、孝彰さん!?」  驚愕の中に、歓喜の混ざる声。
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