『姿の見えないストーカー』に追われています

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 うわあ、とますます顔を強張せて視線を遣ると、会議室から戻ってきた高倉さんが感動に瞳をうるませて、口元に両手を当てている。 (よりによって最悪のタイミングで……) 「お久しぶりです……っ」と頬を紅潮させながら、足早に近づいて来る高倉さん。  けれども孝彰さんははて、といった風に首を傾げて、 「えーと、キミは……?」 「高倉です。高倉里沙。三年前、新宿のホテルでランチをした……!」 「ああー、うん。そうそう、高倉さんね、はいはい」 (いや絶対忘れてるでしょ、その反応)  あまりにおざなりな返事に、ちょっとだけ同情心が疼く。  だって、高倉さんはつい私に嫌がらせをしてしまうくらい、ずっと想っていたのに。  うっかり風邪をひいてしまいそうなくらいの温度差がある。 「で、俺になんか用? いま取り込中なんだけど」 「なんの用って……」  突き放すような物言いに、高倉さんがピタリと足を止めた。  ……うん、これはさすがにショックだよね。  まあでも、これで目が覚めてくれれば、高倉さんの嫌がらせもお終いに――。 「っ、運命です」 「……はい?」
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