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別に、高倉さんを擁護するつもりは一切ない。
けれどこれは、あんまりすぎる。
彼を傷つけないようにと、これまで言葉を選んでいた自分が馬鹿みたい。
(……部長にはもうやっちゃったし、いいか)
腹をくくった私はもう隠すことなく息をついて、笑みを消す。
と、私の変化に気付いた孝彰さんが、
「ああ、ごめんね? なんか、邪魔が入っちゃって。場所かえて話そっか」
「帰ってください。そして金輪際、二度と私に関わらないでください」
「……え、と? 彩愛さん?」
「既に何度もお断りしましたよね。というか、そもそも食事の件だって、私は部長に騙されただけで一切望んでないんです」
「そう、だけどさ。あの時だって、楽しかったでしょ?」
「いえ、まったく。退屈で退屈で、早く帰りたくてたまりませんでした。孝彰さんの話もろくに聞いていません。まあ、貴方様は一人で気持ちよーくお喋りされていて、非常に楽しそうでしたけども」
孝彰さんが「なっ!?」と目を見張る。
その顔にはプライドを傷つけられた怒りも混ざっていたけれど、私は構うことなく言葉を続けた。
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