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……ここまでくると、これまでのストーカー達の方がマシに思えてくる。
(なんか、頭が痛くなってきた)
推測するに、こちら側がなんとか理解してもらおうといくら説明を重ねたところで、結局は向こうの都合の良い返事をするまでは、永遠にこうした押し問答が続くのだろう。
周囲の社員はみんな息を潜めて、好奇の目を向けてくるだけ。
良い晒しモノ。ほんと、最悪。
「……ともかく、何を言われたところで私の気持ちは変わりませんので。お引き取りください。もっと"つりあう"方が、他にいらっしゃいますから」
「ちょっと、彩愛さん!」
引き止める声に胸中で「もう無理!」と叫びながら、席を立った私はフロアを飛び出て、足早に廊下端の女性用化粧室に逃げ込んだ。
(さすがにここまでは追ってこないでしょ……)
パウダーコーナーの棚に手をついて、はあとため息ひとつ。
あの人はもう、出て行ってくれただろうか。
粘られていたら嫌だな……と戻り時間を思案すべく腕時計を確認する。刹那、
「――ちょっと! どういうつもりよ!」
「!」
鬼の形相で飛び込んできたのは、高倉さんだ。
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