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「……霊感ゼロの私なんかに付いてくるより、あの男のほうが、"アナタ"のことわかってくれるんじゃない?」
足は動かしたまま、独り言のように呟く。
当然、夜道は静まり返ったままだし、やっぱり"なにか"も変わらず付いてくる。
(せっかくこっちが"提案"してあげてるのに、無視ですか)
たぶんこの時私は、昼間の襲撃によるストレスと、お酒の力も相まって気が大きくなっていたんだと思う。
こっちの話など聞いてもいない、理不尽な"嫌がらせ"を続ける"なにか"に、ここ最近の悩みの種が重なって、
「まさか、"アナタ"も私の顔目当てだなんて言わないでしょうね?」
嘲笑交じりに吐き出した、その時だった。
「――嬉しい。まさか、気付いて頂けるとは」
「っ!」
ぞわりと粟立つ肌。
衝撃に足が止まる。というか、止めざるを得なかった。
前方、十メートルほど先の街頭下に、ぼんやりと浮かぶ女性の立ち姿。
白布に紅色の花が描かれた着物を纏い、真っ黒な髪を芸妓さんのように結い上げている。
光を避けるようにして俯く彼女の顔は見えない。
なのに私は瞬時に、"違う"と感じた。
――あれは、人間じゃない。
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