『姿の見えないストーカー』に追われています

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『姿の見えないストーカー』に追われています

 ――まただ。  背に纏わりく、じっとりとした嫌な気配。  私は足を止めずに、そっと背後を見遣った。 (やっぱり、誰もいない……)  時刻は20時過ぎ。  商業施設が併設されている錦糸町駅周辺や、飲食店の立ち並ぶ路地はまだまだ明りが眩しく賑わっているけど、その先の錦糸公園横に出ると一気に光源が減り、歩く人もほとんどいなくなる。  大広場の主のようなモールを横目に、日中は車通りの激しい大通りを渡って、住宅街の細道に入ってしまえば、静かな夜の帳だけが佇んでいる。  もう一度、今度は立ち止まってしっかりと後方を確認した私は、変わらず誰もいない夜道に再び前を向いて、早足気味に帰路を急いだ。  沿道に建つ家々から漏れる、誰かの明り。  何かあったら叫ぼうと胸中でウォーミングアップを始めつつ、肩にかけた通勤用のショルダーバッグからスマホを取り出し、握りしめる。 (ついでも蹴りの一発でも……ううん、避けられたら逆にピンチになっちゃうか)  歩きやすくもシルエットが優美な五センチヒールが、心の焦りを表すようにカツカツ鳴る。 (――あ)
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