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「鮫島さん、俺のモデルになってください!」
昼休みの賑わいに紛れて、信じられない一言が私の耳に届いた。
「へ……?」
思わず間抜けな声を出して振り向けば、学校内の人気者でありクラスメイトの西田くんが私に向かって頭を下げていた。
「……俺の絵のモデルになってほしいんだ。ダメかな?」
私の反応を見てなのだろう。西田くんは再度私に説明すると、懇願するようにこちらを真っ直ぐ見つめてくる。
「ダメじゃないけど……」
懸命にお願いされて、さすがに断りづらい。
今年度、高校二年生で初めて同じクラスになった西田くんは絵を描くのがとても上手で、将来は美術系の進路を希望しているらしい。
だから西田くんがモデルを探しているのは不思議じゃないけれど、どうして私なのだろう。
クラスメイトとはいえ、西田くんと数えるほどしか話したことがない。
さらに、私は一言でいえば地味だ。
私よりもモデルに適した人は、たくさん居るだろう。
「本当? じゃあ、お願いな!」
思っていることをはっきりと言えない私の心の声に気づくはずなく、西田くんは嬉しそうに笑った。
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