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「うん、良い感じ。今日はもういいよ。ありがとう」
「あ、うん。お疲れさま」
西田くんは、どんな風に私の絵を描いてくれているのだろう。気になるけれど、秘密らしい。
絵を見れば冴えない私をモデルに選んだ理由がわかるかもしれないのに、秘密だなんて残念だ。
朝一など美術室にこっそり来て彼の絵を見ることもできるのかもしれないが、そんな勇気のない私は律儀に西田くんとの約束を守った。
*
西田くんのモデルを受けていたのは、二週間に満たないくらいだった。
最終の仕上げは自分でできるからと、結局最後まで私は西田くんがどんな絵を描いたのか知らないままモデルを終えた。
モデルの役目が終わったとき、思わず寂しいと感じてしまったのは私だけの秘密だ。
そして二ヶ月が経ったある日、私は突然放課後に「見せたいものがあるんだ」と西田くんに声をかけられた。
西田くんに連れられて来たのは、美術の展示場だった。
それだけで、西田くんが私に見せたいものが何なのか、何となくわかった。
きっと私をモデルにして描いてくれた絵なのだろう。
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