人気者の彼から指名を受けました

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 今まで美術館自体、数えるほどしか行ったことのなかった私にとって、似たような空気を持つ展示場は緊張する。  いくつもの素晴らしい絵の中を歩いて、一番奥まで通路を歩くと、一際目立つように展示されている絵がいくつかあった。  学校名と氏名とタイトルの上にメダルのような飾りが付いていることから、受賞した作品なのだろう。  そのうちの一枚の絵の前で、西田くんは足を止めた。 「鮫島さんだよ」  うちの学校名と西田くんの名前とともに『温もり』とタイトル欄に記されている。  そこには、色彩豊かな緑で溢れる中、包容力の感じられる女性が優しい微笑みを浮かべている姿が描かれていた。  これが、私……?  絵の中の女性の瞳は輝いていて、表情も穏やかだ。とても地味で冴えない私には見えない。 「受賞だなんてすごいね、おめでとう」  私の口からは、当たり障りのない祝福の言葉を贈った。  西田くんはへへっと得意気に笑う。
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