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「鮫島さんのおかげだよ。モデルなんて引き受けてくれて、本当にありがとう」
「私のおかげだなんて大袈裟だよ。受賞は、西田くんの実力だから」
何より、私をモデルにしたにしては、あまりに輝かしい女性が描かれている。
私の何が役に立ったと言うのだろう。
今日くらい、聞いてもいいだろうか。
「……西田くんは、どうして私をモデルに選んだの?」
勇気を出して問いかけると、西田くんは「ああ」と少し照れたように笑った。
「今年の春、同じクラスになったばかりの頃、俺と鮫島さんって席近かったでしょ?」
「うん?」
「その頃、英語の授業で、自分の夢をグループ内で発表する課題を出されたのを覚えてる?」
言われてみれば、あったかもしれない。
「そのときに俺と鮫島さんは同じグループでさ、俺は世界一の絵描きになりたいって言ったんだ。グループの大半のやつらは笑ったし、今まで俺の夢を聞かせた友達や家族もみんな笑った。世界一だなんて子どもみたいだって」
夢があるって素敵なことなのに、笑われてしまったと少し寂しそうに話す西田くんの横顔が切ない。
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