甘噛みビタースウィート

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甘噛みビタースウィート

 朝起きて、「どうしてこうなった」と私は思った。体に残るひどいだるさと、お尻の下とかがべしゃべしゃになってしまっているシーツの感触から、昨夜のことが夢ではないとわかる。  昨夜私をめちゃくちゃにした十年来の男友達は、安らかな寝息を立てて眠っている。こうしてみるとやっぱり昨夜のことが信じられなくなるような、愛嬌のある人畜無害な顔立ちだ。  でも、昨夜私は彼に手ひどく抱かれた。手ひどい……というと語弊があるかもしれないけれど、かなりしつこくされた。  夜遅く、泣きながら私の暮らすマンションに駆け込んできた彼に「慰めて」と必死にねだられて、押し切られる形で体を許したのがいけなかった。あまりに悲壮感漂う姿に、拒否すれば死んでしまうかもしれないなんて思って受け入れたら、とんでもない目に合わされた。  衝動的にたった一回抱くのかと思いきや、彼は執拗に私を追い詰めた。とにかくしつこかった。しつこかった癖に、二回もした。そして、今健やかな寝息を立てていやがる。 「……おはよ。穴が開くほど見られてるからてっきり見つめられてるのかと思ったら、睨まれてるな。どしたの?」  パチっと目を開けた裕太が、そんなのんきなことを言う。まだ寝ぼけてちゃんと目が開いてない顔とか、かすれた高めのハスキーボイスとか、憎めない要素は相変わらずなのに、それが今は逆に私を苛立たせる。  でも、その苛立ちを言語化しようと思ったら、うまくいかなかった。 「……一回だけかと思ったのに、裕太が二回もするから。体がだるくてきついの」  言っていて、これは違うなと自分でも思った。それに、裕太の顔を見れば今のは言わないほうがよかったということもわかる。 「二回でやめてあげたのに、その言い方はないよね? それに、沙智だってあんなに気持ちよくなってたのに。……シーツの染み、全部沙智のじゃん」  ニヤニヤしながら言われて、こんなこと言うんじゃなかったと後悔した。昨夜、裕太の本性というものを嫌というほどわからせられたのに、私はまだ彼が可愛い顔で「ごめんごめん」なんて言うことを想像してしまっていたのだ。  裕太とは、中学生の頃からずっと友達だ。高校も同じところに行って、大学は違ったけれど同じ街に暮らしていた。お互いに恋人ができてもずっと仲良しだから、周囲からは「男女の友情って本当にあるんだね」なんて言われていたくらいだ。働き始めてからも、相変わらず仲がいい。  裕太はいつでも穏やかに私の話を聞いてくれて、いつでも私の味方でいてくれた。中学生の頃、私がちょっとイジメみたいなものに遭って体操服を隠されたときも、誰よりも怒ってくれたのだ。  だからずっと信頼していて、それこそ恋愛とは別の部分でこれから先も好きでいられる人だと思っていたのに……昨夜それを、一番最悪な形で裏切られた。 「え、沙智、怒ってる?」 「……怒んないわけないでしょ」 「わかんないなあ。あんなに感じてたのに?」  私の隣に横たわったまま、裕太は心底不思議そうにしている。ひどい話だ。私は、こんな男を十年も友達だと思っていたのか。 「沙智は、俺のことが好きだからあんなに感じたんだよね? 俺のにギュウッて絡みついて、すごい締めつけたじゃん」 「好きとか……違うよ」 「じゃあ、沙智は好きでもない男に抱かれてあんなに感じるんだ? すごい淫乱だね。最低だ」 「それは……」  裕太の手が伸びてきて、私の髪を撫でる。拒もうとしたけれど体の上にのしかかられて、身動きが取れなくなってしまった。  朝の生理現象か今のやりとりで興奮したのか、裕太のものはまた硬くなっている。 「順序が逆になったけど、今から恋人になればいいじゃん。思ってたとおり、体の相性も最高だったし。俺、沙智なら何回でも抱けそう。何時間でも抱いてたい」 「……何でこんなことするの? 私たち、友達だったでしょ?」 「友達ねえ……友達が恋人になるのはダメ? どうせ沙智はクズ男としか付き合わないんだから、同じクズなら俺でもいいじゃんか。俺、こんなことはしたけど、沙智にずっと一途だし。沙智が他の男と付き合ってる間も、ずっとずっと好きだったよ。沙智が他の男に傷つけられて泣くたびに、俺を頼ってくるのがたまらなく気持ちよかった」 「……ひどい」  話のあまりの噛み合わなさに、悔しくなって涙が出てきた。  裕太の気持ちと私の気持ちが、まったく違うものだったということが苦しくてたまらない。 「裕太にだって彼女いたことあるでしょ? あの子たちのことは遊びだったっていうの? ひどい」 「ひどくないでしょ。いつも向こうから告白してきて付き合ってっていうから、受け入れてただけ。体の関係だって、向こうから望むからやってただけで、むしろこちらとしては慈善事業なんだけど? 無理やりやったのは、沙智のことだけ」  お前は特別だから、みたいな響きで言ったけれど、ゲス発言に勢いがついただけだ。  気持ちのない交際を慈善事業だと言い、私を無理やり抱いたのはまるで愛情があるからだと言うこの男が、本当に私の友達だったのだろうか。 「……私は、裕太のこと誰より信頼できるって思ってたのに」  悔しくなって、ポロポロと涙がこぼれた。その涙を指先で拭って、裕太は口の端を上げて笑う。 「俺より信頼できる男と付き合わなかった沙智が悪い。てか、人畜無害なオトモダチのフリし続けるのも、正直しんどかったんだけど」  こんな悪い顔で笑うことも、声がこんなに低いことも、今まで知らなかった。  私が困ることは絶対にしない、私を泣かせるやつは絶対に許さない、そんな優しい男友達だと思っていたのに……。 「沙智は、まだ俺のことをオトモダチだって信じてるんだね。悪い夢だったらどんなにいいかって顔してる。俺はむしろ、ようやく夢が現実に追いついたなぁって感激してるんだけど。……夢の中でなら何回も抱いてきたから」  のしかかったまま、裕太が下半身をぐっと押し付けてきた。硬い彼のものが、私のお腹に当たる。その感触に昨夜のことを思い出したのか、私の体も反応してしまいそうで、嫌になる。 「何だろうなぁ……安心安全な男友達だと思われてるより、嫌われてるほうがいっそ楽な気がしてきたなぁ。だったら、嫌われるつもりで特大の秘密を暴露しようかな」  一体何を暴露しようというのだろうか。裕太がより一層笑みを深めて私を見つめている。そんな悪い顔をしてほしくなくて、また涙が溢れてくる。 「中学の頃、沙智の体操服が盗まれる事件があったじゃん? あれやったの、俺なんだ」 「え……嘘……だってあのとき、裕太めちゃくちゃ怒ってくれたのに……」 「うん、ごめん。沙智が俺のこと頼りにしてくれてるって思ったら犯人にすげえ腹立ってきてさ。犯人、俺なんだけど。あのときさ、傷ついて怖がって泣く沙智を見たら、興奮してたまんなくて。何回も抜いたなぁ、泣き顔と体操服で」 「…………」  罵ってやりたいのに、あまりのことに私は言葉を発することができなくなった。  この十年、どこかで歯車が狂ったのだろうと考えていたのに、最初からおかしかったなんて。  あのとき、私は物を盗まれるほど一体誰に憎まれ嫌われたのだろうかと、傷ついたのだ。他者から向けられる悪意というものに怯えたのだ。  だからこそ、あのとき誰よりも怒って心配してくれた裕太のことを信じたのに、そこから仕組まれていたなんて……もう何を信じたらいいかわからない。 「……あのとき、私すごく怖かったのに」 「怖がってたね。いつも気丈にしてる沙智が泣く姿って、何であんなに可愛いんだろうね」 「……裕太は、少しは悪いことしたって思わないの? 私のこと、ずっと騙してたんだよ?」 「騙してた、ねぇ。でも、沙智は何も損してないよ。むしろ、俺がずっとそばで守ってきたのにな。俺っていう帰る場所があるから、安心してクズ男と付き合えてたってこと、あると思うな。だったら本物のクズと付き合おうよ。自力で男を選ぶより、俺のがずっとマシだよ。俺なら、沙智のご両親とも仲良しだし」  ニヤニヤしながら、裕太が枕のそばに置いていたスマホを手にした。そして、ラインのやりとりの画面を見せてくる。 「この前地元に帰ったときに、沙智のお母さんとライン交換したんだ。『あの子、マメに連絡するタイプじゃないから心配で』って言うから、俺がマメに連絡してんの」 「え、嘘でしょ……」 「ほんとほんと。『悪い男にしか引っかからないから、この先結婚できるか不安よ』ってお母さん言ってたから、じゃあ俺がプロポーズしますねって言ったらめちゃくちゃ喜んでたよ」  あははと機嫌よく笑う裕太は、さらにスマホを操作して今度は写真を見せてきた。不鮮明な画面をよく見て、私はたまらず悲鳴を上げた。 「やだ! 何それ……消して!」 「何それって、沙智が俺のを咥えこんでるところ。いわゆるハメ撮りね。消すわけないじゃん。一生宝物にする」 「やめて!」 「やだよ。動画もあるけど、見る? 俺たちが仲良くしてる姿見たら、ご両親も安心するんじゃないかな」  裕太は勝手に動画を再生して、私に見せつけてきた。顔をそらしても、音声はどうしても耳に入る。湿った肉と肉がぶつかり合う音と、裕太の荒い息遣いと、私の媚びるみたいな声が響く。……これを見て、私が無理やり犯されていると感じる人はいないだろう。私は裕太に抱かれて、確かに感じて前後不覚に陥っていた。こんな動画を撮られていることにも気がつかないほどに。 「……お母さんに、言うの?」 「言ってほしくない? じゃあ、言わないよ」  思う壺だとわかっていても、懇願せずにはいられなかった。あんな姿、誰にも見られたくない。それに……こんな形で誰かと関係を持ったことを、大切な両親に知られたくない。 「大丈夫。泣かなくていいよ。周りには、俺たち普通に付き合ったってことにすればいいんだから。今日から沙智は俺の彼女。十年来の友情が恋に変わったなんて、よくある話だよ。ね?」  私の頭を撫でながら、裕太は優しい顔と声で言う。それは、この十年ずっと信じてきたものだ。でも、目の奥が暗い。どうあっても私に言うことを聞かせるという意思を感じる。 「じゃあ、彼女になったから俺のお願い聞いてもらおうかな。――舐めてよ。今までどんなふうに彼氏のもの舐めてきたの?」  私の上で膝立ちになると、裕太は屹立したものを顔の前に突き出してきた。その手にスマホをちらつかせるのは、私に拒否権がないことを思い知らせるためだろう。 「……舐めるから、座って。この体勢はきつい」 「うん、わかった。積極的な沙智も可愛いね。やっぱり無理やりするより、沙智から求められるのがいいな」  ふざけた発言にいちいちつっこむ気にもなれなくて、私は座った裕太の股座に顔を埋めた。  先の部分を口に含むと、濃い情事の匂いがした。私の愛液と裕太の精液が混じった、いやらしい匂いだ。裏筋に舌を這わせると、裕太のものはビクンと跳ねた。そのまま竿を握って少し力を入れて擦ると、彼の口からくぐもった声が漏れた。感じているのだ。このまま一度果ててもらおうと口と手での愛撫を続けると、途中で頭を摑んで引き離された。  「……普通にうまいのがムカつくな。誰に仕込まれた? 大学入ってすぐのときの、サークルの先輩とか?」  怒った顔で尋ねられても、そんなことは覚えていない。  これまで何人かと付き合って、その人たちを喜ばせたくて身につけたものだ。……女癖が悪いやつとも付き合ったから、他の子に盗られたくなくて必死でそういうテクニックを磨いたこともあるけれど、もうそれが誰だったかもよく思い出せない。   「……これまで気にしないって思って生きてきたけど、やっぱ沙智の処女を他の男に盗られたのは、腹立つな。てか、何で沙智の処女を奪ったやつは沙智を粗末に扱ってんのかな。俺だったら絶対大事にするのに」  裕太は嫉妬をあらわにしてそんな言葉を口にする。でも、その発言にはまったく同意できない。 「……裕太が今まで付き合ってきた子の中にも、処女の子はいたと思うよ。自分だってその子たちを大切にできなかったくせに、そんなこと言わないでよ」 「いや、いたけどさ。それは向こうが喜んで差し出してきたんだよ。拒んで傷つければよかった? 俺と寝られて、向こうだってそれでよかったはずだよね?」 「それなら言うけど、私もその子たちみたいに、喜んで差し出したんだよ。好きな人になら、大事な初めてをあげてもいいって思ったから」  嘘偽りなく突きつけた事実に、裕太ははっきりと顔を歪めた。少しは悔しがって反省してほしい。これまでの彼女たちを不誠実に扱ってきたことと、私を傷つけたことを、少しでも悔いてほしい。そう思って口にしたのだけれど、裕太は腹を立てただけだったみたいだ。 「……そっか。好きな人だからあげちゃったんだ。なら、仕方ないね。――まだ沙智の初めては残ってるだろうからいいよ。さすがにここは使ったことないよね?」 「きゃっ……!」  再びのしかかってきた裕太が触れるのは、私のお尻だ。人に見せるのも触れさせるのも当然憚られるその場所に、裕太はそっと指を這わせた。その中心をとんとんとされると、振動で下腹部がキュンとした。それを察したのか、裕太はニヤリとする。 「今までいろんな男に触れさせてきたのは癪だけど、沙智の体にまだ誰も触れたことがない場所が残ってるのは嬉しいな。大事にするよ。ゆっくり開発しようね」 「やだ! 触らないで!」 「……そんなこと言っても沙智、お尻までぐっしょりだけど」 「それは、昨夜の……」 「一晩中乾かないなんてこと、あるわけないじゃん。……さっき、俺のを舐めて感じたんだね」 「……そんなことない」  にやける裕太を見ていたくなくて、私は顔をそむけた。それを屈服したと受け取ったのか、裕太は今度は指をすっかり濡れた秘所へと移動させた。少し力を入れられるだけで、私のそこは裕太の指を飲み込んでいく。 「沙智はまだ、浅いところをこすられるのが好きだよね。今まで奥で感じさせてくれる男がいなかったんだね」 「……知らない」 「何かさ、沙智が付き合う男ってみんな、独りよがりなセックスしかしなさそうなやつばっかだよね。……こんなに淫乱な子なのに、開発しないなんてもったいない」 「んんっ」  裕太の指がどこかをギュッと押して、その瞬間ものすごく強烈な快感が走った。挿入されているのは中指で、その上から挟み込むように親指で花芽を押さえられている。親指に力を入れてぐっと押さえつけられると、さっきとは違う気持ちよさがあった。 「沙智は淫乱だから、自分でここを弄って気持ちよくなってるんだよね。それとも、歴代の彼氏がみんな下手くそだったからひとり遊びが激しくなっちゃったのかな」 「違……そんなこと」 「こんなにここ大きくしてるのに? 真っ赤に腫れて、可愛いね」 「きゃっ……」  裕太が私の両脚を大きく開かせて、その間に顔を埋めた。伸ばされた舌が、容赦なく私の秘所を責め立てる。唾液をまぶしてわざと大きな音を立てて舐めているのがわかって、私はいやいやと身をよじる。でも、そんなことをしても虚しいくらい、私のそこは蜜を溢れさせていた。 「すごいね。舐めても舐めてもなくならない。沙智は本当に淫乱だなぁ」 「……淫乱じゃ、ない」 「じゃあ俺のこと好きなの? 違うよね? だったら、好きでもない男に舐められてこんなに濡れるなんて淫乱で変態だろ」 「違う……」  舐めるのをやめて挿入する指を二本に増やしながら、裕太は悲しそうな目で私を見ている。その目の奥は暗い。  裕太はきっと、淫乱だと認めさせて私を貶めるか、自分を好きだと認めさせて手に入れるかしたいのだ。  ……手に入れたいのなら、何でこんな手段を選んだのかと聞きたくなる。 「……何で、こんなことしたの? 私のこと好きなら、そういえばよかったのに……」  言ってから、失敗したことに気がついた。裕太の目の奥がさらに暗さを増す。絶対に言ってはいけないことを口にしたのだと、その目を見て理解した。 「ずっとそばにいたからさ、沙智が俺のこと全然好きじゃないってわかるんだよね。一度も、俺にときめいたことないの、知ってるもん。……この十年、沙智が俺以外の男を好きになるのを、ずっと隣で見てきたからわかるんだよ」  涙は流していないけれど、泣いてるんだなってわかった。  裕太は、悲しそうにしている。その目を見ていたら、雨に濡れた子犬を見ているみたいな気持ちになってきた。 「……俺のこと、可哀想だって顔してるね。沙智は優しいよな。可哀想だって思ったらヤラせてくれるんだもんな。今まで、こうやって股開いてきたの?」    否定するために首を振ったのに、裕太はますます悲しそうな顔になる。こんな顔をさせたいわけではないのに。どうしたらこんな顔をさせずに済むのか、全然わからない。 「別に、もういいんだ。沙智が俺のこと好きじゃなくても、俺はもう離してやる気はなくて、こうして体だけでも俺のものにできてればいいから」  そう言って裕太は私の中をほぐしていた指を抜いて、そこに自身のものをあてがった。少し押しつけるだけで私のそこは受け入れる気満々に、グチ……といやらしい音を立てた。先ほどまで指でかき回されていたそこは、早く雄々しいもので貫かれたいとひくひくしていた。 「ま、待って! ゴムはつけて」  このまま生で挿入されては大変だと思って慌てて言って、しまったと気がついた。裕太がそれはそれは嬉しそうに笑う。 「『挿れないで』じゃなくて、ゴムつけて……か。いいよ。沙智の部屋に来る前にコンビニで買ってきたから、たっぷりあるんだ」 「ちが……」 「え? 生がいいの? 生でしてもいいけど、沙智はそろそろ排卵の時期だから、妊娠しちゃうよ?」 「……何で知って……」 「知らないわけないよ。……もうすぐ排卵の、一番エッチになるときに家に押しかけられたって気づいてなかったの? ちょうど彼氏もいなくて、ひとりが寂しい、しかも発情しちゃう時期に、わざわざ迫られたってわかってなかったの?」  中学生のとき、私の体操服を盗んだ人だ。私の生理周期くらい知っていても何の不思議もないけれど、把握した上で“仕掛けられていた”ことにゾッとした。  言葉をなくす私を満足げに見下ろして、裕太は自分の反り返ったものに薄膜を装着した。そして再び、私の蜜を滴らせる秘所にそれをあてがった。 「沙智はね、発情期に新しく彼氏ができることが多かったんだよ。ワンナイトラブみたいに始まる関係も多かったくせに、よく今までお上品な顔して生きてこられたよね。……そろそろ、自分が淫乱だって認めたらいいのに!」 「んあぁっ……!」  さっきまでいやらしいくらいねちっこく責めてきていたくせに、裕太は自分のもので一気に私を貫いた。よく濡れたそこは裕太のものを拒むことなく受け入れて、それどころか歓迎するように締めつける。  裕太が腰を激しく打ち付けるたびにパン、パンと肉と肉がぶつかる音と、彼の屹立に蜜が絡むいやらしい音が響いた。昨夜、二回も執拗に抱かれたため、私のものはすっかり裕太の形になってしまっている。……そんなふうに感じるくらい、フィットして、吸い付いて、もっと奥へと誘うようでたまらない。 「……可愛い。沙智の体、どこもかしこも可愛い。いい匂いがする。どこ舐めてもおいしいね」 「やっ、やぁ……だめ、そこ、なめちゃ……あぁっ!」  激しく何度も何度も貫きながら、裕太は私の胸を舌で愛撫していた。乳房の輪郭をなぞるように舌を這わせていたかと思うと、突然そのいただきに吸い付いて、引っ張るようにしたり、歯を立てて軽く噛んだりする。そんなことをされると痺れるみたいな快感が全身に走って、また裕太のものを締め付けてしまう。昨夜もこんなふうに全身を責め立てられて、私は何度も何度も果てさせられてしまった。  でも、果てても終わりなんてこない。裕太は巧みに自分が達するのは避けて、執拗に私を責め立てる。それに、果てたところで指や舌で虐めてくるからどうしようもない。昨夜も散々涙と汁まみれにされた。  今夜だってどうせ、私はこの快感から逃れることはできなくて……本気で逃れようなんて気にはなれなくて、裕太の気が済むまで犯されるのだ。 「やっ、ゆうた、らめっ、そこ、だめぇ……来る! きちゃうっ、やぁ……!」 「わかる? 沙智、ここがね、沙智の子宮口。俺の精液欲しいって、俺と赤ちゃん作る気満々で下りてきたんだよ! 気持ちいいねぇ、沙智?」 「……ぐりぐり、だめぇ……あ、あっ……そこぉ……」 「ここ? ここ好き? えらいね、子宮口で感じられるようになったね? ここで感じられるようになったら、一人前の淫乱だよぉ? もっと開発してあげようね? いつも奥でイケるようになろうね?」 「あっ、あっ、んあぁっ」  裕太は私をうつ伏せにして膝立ちにさせ、後ろから容赦なく貫いていた。激しく腰を叩きつけられるたび、裕太の屹立の切っ先が私の最奥を刺激する。抉るようにねじ込まれて、またさらに締め付けてしまう。  それだけじゃなくて、後ろから胸のいただきや蜜に濡れそぼる花芽を虐められるから、私の秘所は飛沫を上げてしまっていた。……こんなに簡単に潮を噴く体だったなんて、知りたくなかった。 「……そんなに締め付けないで……も、イキそぅ……」  私があまりにも裕太の剛直に絡みつくから、彼の息が上がってきた。苦しそうだ。本当にもうすぐ、果ててしまうのだろう。  その余裕のない掠れた声に、私の胸は不覚にもキュンとしてしまった。胸ではなくて下腹部な気もするけれど、とにかく裕太をもっと気持ちよくしてあげたい気持ちになって、私は自分から腰をくねらせた。 「あ……沙智、もぅ……」 「いいよ、裕太。……来て」 「……そんなこと言ったら、止められなくなるだろぉっ!」  裕太は一度私の中から自身を引き抜いて、体の向きを変えさせた。仰向けにした私を組み敷くと、再び蜜壺を貫いた。  焦らすことをやめた裕太は、ただただ激しい。荒々しく、本能の赴くままに腰を振る。  そして、まるで私を食べてしまうかのように乱暴なキスをする。 「あぁ……沙智の唇、おいしい……口の中も、舌も、気持ちいい……ずっとキスしたかった……」 「んん……はぁ……んくっ」  裕太は腰を振りながら、嬉しそうに私の唇を、舌を貪る。まるでこの十年のキスしたかったという気持ちを晴らすかのように。  私はイキそうなときにキスされるのがすごく好きだから、そんなふうに舐め回すように舌を絡められて、口の端から滴るほど唾液を流し込まれて、たまらなくなってもう達してしまった。  爪先から貫かれるみたいな快感が脳天まで走って、頭がふわふわする。目の裏がパチパチ光が弾けるみたいになって、もうまともなことは何も考えられそうになかった。  どさくさに紛れて鼻まで舐められて溺れたみたいになって苦しいけれど、そんなのことどうだっていいくらい気持ちがよかった。 「……イく……も、イくぅ……!」 「いいよ、来て……来て! 一番奥で出して!」 「出すよ……出すっ……沙智ぃ……!」  ギュッとしがみついて、耳元で可愛い喘ぎ声を上げて裕太は達した。低い悪い声ではなくて、いつもの可愛い高めのハスキーボイスだ。可愛い。意地悪言わないで素直に言ってしまう裕太は、すごく可愛い。  私が好きで、私の体が恋しくて、私にギュウギュウしめつけられながら達してしまう裕太は可愛い。ずっとずっと止まらなくて、三回目なのにすごい量を迸らせてしまうのが、たまらなく可愛い。  薄膜越しでも、すごくたっぷり出たのがわかる。これが全部私の中に吐き出されていたらどんな気分だったのだろうと考えると、まだ裕太を咥えこんだままの蜜壺が、じゅくりと疼いた。  ……裕太のことが好きなのか、私が淫乱なのか。  わからないけれど、またしたいと心も体も思っていた。その思いを込めて、裕太の肩口にかぷりと歯を立ててみる。 「……痛。何で噛んだの? 俺に犯されて興奮した?」  悪い顔をして裕太が尋ねてくる。興奮しているけれど、目の奥はやっぱり暗い。きっと、この目が明るく輝くことはないんだろう。私を激しく犯しているとき以外。その目に見られてゾクゾクしてしまうあたり、私ももうダメだ。 「うん、興奮したの。気持ちよすぎて、噛んじゃった」 「……そんなことするんだ。じゃあ、もっと噛みたくなるくらい、気持ちよくしてやるよ」 「それなら……次は生でして。生でしたら、もっと気持ちいいと思うよ」  私が言うと、裕太が何とも言えない困った顔をした。  自分のことが好きなのか、それとも私は真の淫乱なのか、きっと迷ったのだろう。  結局彼が、どちらの考えを選んだのかわからない。 「だったら、婚姻届にサインして。サインしたら、何回でも中に出してあげる。……断らないよね? そんなことするなら、俺たちがどれだけ仲がいいのか、沙智のお母さんに見てもらうからね」  裕太は、悪い顔で笑う。  感じてない裕太はいけない。可愛い顔をしないから。  可愛い顔をさせたくて、私はまだ胎内に咥えこんだ裕太を締めつけた。
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