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20160726
生前の写真を目にするたびに苦しくなる。
今はそれだけで済んでいるものの、少し前までは写真を見ては涙を流して泣いた。
2016年3月7日。暖かい春がもうすぐそこという頃、うちのねこさんは永い眠りについた。のちにわかったことだけど、上口蓋が腫れあがるほどの腫瘍ができていて、それが原因だった。
2016年2月26日
家に帰るとねこさんの具合が明らかにおかしい。
私のところまで来ようとするも、足取りがふらふらとして真っすぐ歩けずに途中でこけてしまう。
慌てて駆け寄って、いったいどうしたことかと抱きかかえて具合を見てみると、人間であれば「ぜーぜー」とか「はぁはぁ」といった気管支系の病気に罹ったような苦しそうな息をする。
力が入らないのか、身体はぐったりとして自力で立ち上がれそうにない。また意識もはっきりしていない感じだった。
2016年2月27日
とにかく朝一で病院に連れていく。
血液検査や超音波検査を受けて診察してもらったものの、医者もよくわからない様子で、とりあえず注射と点滴、そして炎症止めの薬を処方してもらった。
病院の処置がよかったのか、ねこさんはまだふらつくものの何とか歩けるようになる。ただ私の顔を見ても知らない人と接するかのように、何かにつけ素っ気無い。
そうかと思うと何か思い出したかのように甘えて来ようとするものの、真っすぐ歩けずにズデンと倒れてしまう。
2016年2月29日
一向にねこさんの具合がよくならない。
再度病院に連れていく。だけど病院では比較的元気な様子を見せる。医者からは薬が効いているみたいだしもう少し様子を見ましょうと、また薬をもらって帰宅する。
帰宅後、また具合が悪くなる。できればこの具合の悪い状態を診てもらいたかったのに。
ごはんもまともに食べられなくなったので、シリンジで強制的に食べさせる。体温がずっと低めなのが気になる。無理にでもごはんを食べさせて、体力だけでも取り戻して欲しかった。
2016年3月6日
しばらく持ち直してきたように見えたりもしたが、やはり様子がどんどんおかしくなっていく。
トイレの中から出て来なくなったり、いつもは高いところで寝るのが、床で寝るようになる。また、いびきのような息を鼻から漏らす。でもいびきではなく、明らかに苦しそうな息だった。
この日、帰宅するとゲージの片隅でねこさんが四肢を伸ばして尿まみれになっていた。
体が冷えてはいけないと思い、急いでタオルで体を拭いてやり、毛布に包んでその日は一緒に布団の中で眠った。体温を維持するには、もうこの方法しか思いつかなかった。
春ももうすぐの3月とはいえ、夜はまだ寒かった。
2016年3月7日
午前中に病院へ連れていき、昨日の様子を話す。だけど病院に来ると、うちのねこさんは例の苦しそうな息をしない。平然とした表情でその辺をうろつこうとする。
結局またも薬をもらって帰って来る。家に着くと、ねこさんはまた「ぜーぜーはーはー」みたいな苦しそうな息をしはじめる。
ネコハウスに引きこもり、ぜーぜーはーはーしていたねこさんだったが、夕方ごろ気が付くと静かになっていた。様子を見てみると、またもや四肢を伸ばして尿まみれになっていた。
だけど今度は昨日と違った。いくら名前を呼んでも何の反応もない。
急いで病院に連絡し、再び向かった。
急患ということでねこさんだけが診察室に連れていかれる。20分かそこら待っただろうか。名前を呼ばれて診察室に入り、席についてしばらくすると、「残念ですが」とお悔やみの言葉を聞かされた。
医者と少し話をした。病院では何ともない様子だったのに、家に帰ると急に苦しそうにしていたこと。できればその時の様子を診て欲しかったこと。
医者曰く、病院では知らない場所ということで頑張って気丈に振る舞っていただけで、家に着いたら気が抜けて、本来のしんどさを見せていたのかもしれない、と言われた。
その時に上口蓋の状態を写真で見せられ、説明を受けた。血液検査や超音波検査では見つけられなかったそれは、仮に最初の診察で見つけられていたとしても、処置は難しかっただろうと説明された。
腫瘍のせいで真っすぐ歩けず、もしかすると記憶もはっきりしていなかったのかもしれない。
それでも病院へ連れ出されても気弱なところを見せまいと、一生懸命、気丈に振る舞っていたのかもしれない。
病院という見知らぬ場所だというのに怯える素振りも見せず。
帰ってきたら気が抜けて、つい安心しちゃって苦しそうな様子を見せてくれていたのかもしれない。
もうちょっと素直に甘えてくれればよかったのに。
さいごまでよく頑張ったね。本当にすごく頑張ってた。お疲れさま。
おやすみ、るぱ。
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