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エピローグ
午前三時十六分。俺たちはホテルを出た。腕を組んで……。
ほとんど、人通りのない商店街を腕を組んで歩く。カツカツと夏芽のハイヒールの音が響いている。
「お兄ちゃん……私さあ……」
「ん……?」
「幼稚園の頃、お兄ちゃんのお嫁さんになりたかったんだよ?」
「俺もだよ」と言いたかったけど、声が出なかった。
「で、私の結婚が決まったとき、一番喜んでくれたのはお兄ちゃんだったよね? ああ、お兄ちゃんと本当の兄妹じゃなかったらなあ……って、ずっと思ってた」
夏芽が星空を仰いで言った。
「……えっ?」
「嬉しかったよ。私……お兄ちゃんが私のお兄ちゃんで……」
「なあ、ゴメンな……」
ふうっと息を吐きだして、俺は小さな声で詫びた。妹の婚約者にヤキモチを焼いていたことも……。
夏芽の顔が左右に動いた。
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「夏芽……?」
「はい……」
「知ってる、姫初め……?」
「知ってるよ。その年の最初にしたエッチのこと……でしょ?」
「一月に姫初めすると、いいことがあるらしいよ。お前も……?」
俺は意識して妹と距離をとる。少しづつ……。
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