31人が本棚に入れています
本棚に追加
「お兄ちゃん、ダメだよ。誘導尋問は……」
「ちぇっ」
「でもさ……、ありがとう……お兄ちゃん……」
腕を組んだ夏芽が俺の腕を引いて、夏芽が言った。夏芽の声が少しかすれる。また俺たちの間が狭まる。少し前まで愛していた胸の膨らみにふわっと俺の肘が触れる。
「いや、お前が幸せになってくれたら……なんて……」
「幸せになるよ。私……」
「おめでとう……」
俺の声もかすれていた。
夏芽が小さな手を出す。温かい手だ。俺たちは手を握りあった。
「はい、八洲夏芽さん、俺たちは恋人解消……な?」
「……うん……解消……」
夏芽がジャンプして俺にハイタッチした。
その日の午後ニ時、夏芽たちを祝福する教会の鐘が鳴った。
数日後、夏芽からメールが届いた。新しい家族の写真を貼付して……。
その後に、夏芽らしき手のひらに、小さな小袋の写真が……。
「何だこれ……?」
スマホの画面を拡大した。
「オ、オカモ……」
コンドームの小袋だ。その後に恥ずかしいくらいになみなみと溜まった俺の使用済みの……。
『お兄ちゃん、私、嬉しかったよ? この小袋、これは私のお守りにしてます。』
俺は、スマホの画面を指で軽く弾いた。
「夏芽、おめでとう、幸せになれよ……」
――おわり――
最初のコメントを投稿しよう!