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16 赤い靴
カレンは、ふうっと深呼吸をした。
幼い頃からずっと夢だったブロードウェイ、このコンテストで優勝すれば、一流劇団との専属ダンサー契約が約束されているのだ。
カレンは貧しい家庭に生まれたが、親を亡くし、資産家の養女となった。
カレンは美しかった。長い手足、妖精のようなウエスト、そして誰もが羨むブロンドと青い瞳。だが、ダンスの才能には恵まれなかった。いくら練習してもキレのいいダンスは踊れなかった。
単発の小さなオーディションであれば、その美貌で必ず合格した。だが、リハーサルになると、カレンが踊れないことは、誰の目にも明らかだった。契約は打ち切られ、次の出演依頼が来ることはなかった。
カレンはついに悪魔と契約をして、赤い靴を手に入れた。その靴を履けば、靴が勝手にダンスを踊る。それは誰にも真似できない・・・ジャネット・ジャクソンですら、幼稚園のお遊戯に見えるくらいに。
ついにコンテストの日、美しき挑戦者たちが、憧れのブロードウェイのステージに集まった。
カレンは、舞台袖で他の出演者と順番を待った。目は合わせない。自分の心臓の鼓動が、聞こえるような気がした。
(この赤い靴さえあれば、優勝は間違いない・・・)
ふうっと深呼吸をすると、右足・・・大切な利き足に赤い靴を履き、靴紐をしっかりと結んだ。
「エントリーナンバー36番、カレン・アンダーセンさん」
その瞬間、赤い靴はカレンを、まるで羽毛のように軽々とステージに運んだ。
「ちょっちょっちょっ!まだ片方しか履いてないって!」
2020 6/9(火)
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