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「千花ちゃんと同じ班になれなかったことが本当に悲しいよ。」
悠里は子犬のような目で僕をみながら、手をさっと握った。その手を振り払おうとすると、僕より先に信楽先輩が悠里の手をはたき落とした。
「えっ、痛いんですけど。何するんですか、信楽先輩。」
会長の親衛隊長である信楽先輩とは面識があるらしく、悠里は非難の声をあげた。
「僕、チャラ男会計攻め地雷なんだ。」
信楽先輩はニコッと笑ってそう言った。その瞬間、悠里が顔を真っ赤にして怒り出した。
「は?!!あんた、まだそんなん言ってんですか?本当に迷惑だから!てか、俺はバリバリのタチだから!!!!!」
「何も聞こえませーん」と言いながら信楽先輩は耳を手で塞いで頭を振っていた。
2人の様子を眺めているうちに、ふと2人とも緋寮所属なことを思い出した。僕も緋寮出身だが、二年生になり1人部屋になったことでさらに孤立化が進んでいた。基本的に寮は2人ずつの部屋割りとなっており各委員会の委員長、副委員長、各寮長のみ1人部屋が与えられている。
同じように2人の様子を遠目に眺めている瀬良くんを見ながら「そういえば、瀬良くんも緋寮だったな」と思っていると、不意に彼と目が合った。彼は何か言いたげな様子だったので、億劫だったが口を開いた。
「…、なんか用?」
彼は一瞬戸惑ったように瞳を揺らす。何かを話すことを迷っているようだったが、決意を決めたように顔を上げた。
「……悠里くんをよろしくお願いします。」
"悠里くんは、あなたを本気で好きだから。"
そう言った瀬良くんの表情は穏やかで、綺麗で、なんだか少し切なげだった。
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