6章 I am worthy of you

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 「千花さん!このお肉食べて下さい。」  バーベキューが始まると、志乃くんがずっと僕と楠木くんのお肉を焼いてくれた。バーベキューをした経験があまりなく、自分でお肉を焼いたこともほとんどなかったので全てが新鮮だった。志乃くんはお肉を焼くのが上手でいっぱい褒めてあげると、嬉しそうな顔をして「千花さんのありがとうが生きる糧です〜。」と話していた。可愛い。  隣の卓では東野くんが源先輩と信楽先輩の肉を焼かされていたので、僕は食べることに集中することにした。  最初、楠木くんは少し申し訳なさそうにおろおろしていたが、信楽先輩が「姫たちが肉焼く日は一生こんから座っといて〜」と椅子まで引いてくれた。エスコート慣れしている様子から、多分モテるんだろうなぁと察した。    「東野くんもお肉食べなよ。」    信楽先輩たちにこき使われていたのが可哀想で、彼にも声をかけると「……いらないっす。」と断られた。僕が優しく声掛けをしたのに、その態度はなんだ?と苛ついたが僕は大人で先輩なのでそんなことでは怒らない。僕も成長したものである。  「いいからー!ほら、座りなよ。」  僕は無理やり東野くんからトングを奪った。正直肉を焼いてみたかっただけである。  僕が肉を焼き出すと、信楽先輩や源先輩が慌て出し、代わろうとしてくれたが僕は譲らなかった。僕も男なら火ぐらい扱えるようにならないと。  「東野くんは特別に僕が焼いたお肉食べさせてあげるよ。」  「あんた、肉とか焼けるの?」  「失礼な。焼いてるのはみたことがあるよ。」  「……それは焼けないって言うだろ。」  呆れたような顔で東野くんは僕をみた。本当に失礼な子だな、と思っていると「千花さんにできないことなんてないよ!あと東野くん敬語使いなよ。」と、志乃くんが援護してくれた。さすが僕の後輩である。その二人の口論をぼーっと眺めていると、楠木くんが急に叫んだ。  「ぎゃーーー!水瀬くん!やばいです燃えてます!」  その声に驚くと、網の上で炎が燃え上がっていた。  「なにこれ!?え!どうしたらいいの?!」  「千花ちゃん!まず火消して!」  「火ってどうやったら消えるの?!」  「危ないから千花さん離れてください!!!」  「水水水!」  現場はパニックになり、慌てた僕らは思考力を失っていた。しかし次の瞬間、ジュッと音を立てて鎮火されていた。網の上には氷が投げ込まれており、焦げまくってほぼ炭の肉がポツンと残っていた。  「千花、何してるの。」    そこには、バケツを持ったけいちゃんが立っていた。  「いや、肉焼いてたら燃え上がって……。」  「肉なんて焼いたことないのに、なんでそんな危ないことするの?」  小さい子に説教するみたいに怒られて、ムッとする。少し失敗しただけじゃないか。確かに、炎が燃え上がってパニックにはなったけど。  「今から水かけようとしてたんだもん。そもそもけいちゃんはなんでいるわけ!!」  「何って見回りだけど。そしたら千花に絶叫が聞こえたんでしょ?三春くん、千花に火なんて扱わせないでよ。」    信楽先輩とけいちゃんは知り合いなのだろう。けいちゃんがチラッと信楽先輩を見ると「おーこわ。」といって震えていた。  「……水瀬先輩は、俺に肉焼いてくれようとしてくれたんで悪くないです。」  怒り狂うけいちゃんをみて、罪悪感を感じたのか東野くんがおずおずとそう言った。腹立つ後輩だと思っていたが、実はいい子だったのか。少し感動してしまった。  「それでできたのがこの肉ってことね。」  けいちゃんが黒くなった肉をじーっと見つめる。なんなんだその文句を言いたそうな目は。そもそも確かに肉は焦げてしまったが、頑張れば食べれそう……な気がしないこともない。そもそも肉を焦がしたくらいでなぜこんなに責め立てられなければならないのか。     「もういいし!この肉は僕が食べるから!!」  「ちかさん?!、その肉氷でビショビショですよ?!」     僕は完全にムキになってしまい、肉を箸で掴んだ。正直全く食べたくないが、ここまできたからには引くことはできない。覚悟を決めて口に放り込もうとすると、けいちゃんに手をがっと掴まれた。その行為に驚いているうちに、けいちゃんがパクッと肉を食べてしまった。  「っ〜〜?!!何食べてるの?!早く吐き出して!」  けいちゃんの背中をどんどん叩いたが、しれーっとした顔をして「ご馳走様。」と言い放った。僕は黒い肉を食べたけいちゃんが信じられなくて、唖然としてしまう。  「じゃあ、火には気をつけてくださいね。」  けいちゃんはそう言うと、氷が入ったバケツを置いてその場を去ってしまった。  「副会長さんと、水瀬くんは仲良しだったんですね。」  楠木くんのその言葉が、静かになったその場に響いた。みんなの前でけいちゃんって呼んじゃったな……なんて思いながら、僕は何も答えらことができなかった。
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