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僕がしばらく悠里から距離を置き、貴人を盾にしていると向側から可愛い顔をした下級生が近づいてきた。
「あのぉ、悠里さん、よかったらあっちでかき氷食べませんかぁ??」
どうやら、悠里のファンだったらしい。夏の海でもこのイケメンは注目の的だ。集まっていたのはこれらの下級生だけではなく、見渡すとかなりのギャラリーが集まっていた。
学園の有名人が3人揃っているからだろう。僕はまるでパンダにでもなった気分だった。
「あーーー、ごめんね!今日は駄目なんだ。」
悠里は残念そうに手を合わせていた。彼が可愛い子のお誘いを断るところを初めて見たので驚いた。
「今日は僕の大事な子が、僕にかまってくれるらしくて♪その子に時間いっぱい使いたいんだ。」
悠里は彼は嬉しそうに微笑みながら僕に目配せをした。「それは君のことだよ。」とでも言いたげなその表情に、少しだけドキッとしてしまった。
「ちょ、ちょっと!!その言い方だったら誤解を生むでしょ?!」
僕はペチペチ彼を叩いた。少し気恥ずかしくて、顔を上げることができなかった。
「え〜〜、でも、千花ちゃん、顔真っ赤だよぉ?」
「…!!うるさい!!」
悠里にはけいちゃんを助けてもらったお礼も兼ねて、宿泊研修ではいつもより一緒に過ごす約束をしていた。だけど、そこまで顕著に喜ばれるとどうしても少し照れてしまう。
「かき氷。」
僕がその単語を口にすると、悠里は「え?」となんのことかわからない様子で聞き返してきた。僕は貴人の影から出て、悠里の手を引っ張った。引っ張られてる本人は、何が起こっているのかわからないといったように呆然としている。
「かき氷、食べさせてよ。」
僕はいちご味が好きなのに、悠里はブルーハワイ味を買ってきた。ちょっとむかついたはずなのに、一口食べたらすごく美味しくて好きなかき氷がブルーハワイになってしまった。なんか納得いかない。
「ね、あの下級生と食べるより僕と食べた方が美味しいでしょ?」
「……当たり前じゃん。」
顔を赤くしながらそっぽむく悠里をみて、少し可愛いと思ってしまった。
……まぁ、僕の方が可愛いけどね!
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