6章 I am worthy of you

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 「あーーーーー!!千花さん!!!もしかして一緒ですか?」  わんわん、と効果音がつきそうな程嬉しそうに僕たちに駆け寄ってきたのは、志乃くんだった。  「志乃くん同じ班?」  「はい!先輩と一緒だなんて嬉しいなぁ!!」  志乃くんは嬉しそうに抱きついてきた。初めての後輩ということもあり、純粋に好意を見せてくれる志乃くんのことを正直可愛いと思ってしまっていた。今回も同じ班になることができて、自分らしくないなとは思いつつも純粋に嬉しかった。  「そっちの子は友達?」  僕が、志乃くんの後ろに立っている男の子に声をかけると彼はビクッと肩を揺らした。ツンツンとした黒髪に、チャラついたピアス。彼には見覚えがあったので、にっこり笑って挨拶をする。  「東野明くんだね。はじめまして。」  東野明_____、クールな顔立ちとガッチリした体格が特徴で、1年生ながら校内に沢山のファンがいるらしい。この前ファンクラブ設立の申し出があったとも聞いてるし、この学園で注目の人物の1人と言っていいだろう。そしてマリモの取り巻きの1人である彼は、風紀委員の要注意人物でもある。  「あんたが、水瀬千花。」  親でも殺されたのかというくらい睨みつけてくる彼を見て、志乃くんは間であわあわしていた。僕としては、彼にそんなに恨まれる筋合いはないのだけれど。  「はいはい、喧嘩はやめなね。東野くんは先輩に敬語使いなさい。この学園上下関係に厳しいからね。」  源先輩が東野くんを制すると、彼は素直に従った。人の言うことなど聞かなさそうな子だったので意外に思っていると、志乃くんがこそっと僕に耳打ちをした。  「明くん、黒寮なので……。きっと知り合いなんじゃないでしょうか。」  この学園は白羽寮、緋桐寮、碧天寮、そして黒羽寮の四つの寮が存在する。黒羽寮____通称、黒寮は四寮の中で最も体育会系の寮だと言っても良い。  白羽寮は、学園の中でもトップのお金持ちが多い寮であり生徒会役員が多い寮だ。碧天寮は成績優秀者が集まる寮、緋桐寮は最も普通の____常識人が集まる寮だと言われている。  歴代風紀委員は主に黒羽寮に振り分けられることが多いと言われているが、僕も委員長も何故か緋桐寮所属である。僕はいいとして、絶対に委員長は黒羽寮に所属すべきだろう。どこが常識人なんだ。緋桐寮の人間は厄介なことが嫌いなため、僕たち2人が緋桐寮だということを嘆かわしく思っているらしい。こんな美少年と同じ寮ということを、もっと誇るべきだろ全く。  ちなみに信楽先輩も緋桐寮であり、この前歯磨きをするときにばったり洗面所で会った。なんとも変なタイミングで遭遇するものである。  それにしても、このグループは中々キャラが濃いメンバーが集まったものだ。まず風紀委員と親衛隊長が同じグループになるなんて、信楽先輩でなければ最悪の状況である。これが如月未知だったら_____と思うと軽く身を投げたくなった。自分のグループはこれで全員だろうか。二年生が僕以外見当たらないが、数の問題で少ないのかもしれない。  「これで全員だよね。」  僕がそう尋ねると、信楽先輩が静かに首を振った。そして、遠くで佇んでいたある人物を指差した。  真っ白な肌にうさぎのような可愛い顔立ちをした彼はトレードマークである長めの髪の毛をサラサラと揺らしていた。  「いやもう1人いるよ。ね、紫苑くん?」  そこに立っていたのは、生徒会書記親衛隊長。_______楠木紫苑だった。
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