6章 I am worthy of you

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 「し、信楽先輩!野菜が剥き出しで売ってます!!!」  「え、果物めっちゃある!!」  僕と楠木くんは、絶賛スーパーで大盛り上がり中だった。なぜなら、僕たちはスーパーという場所にほとんど足を踏み入れたことがないからだ。清峰学園に通う生徒たちは、超がつくほどの大金持ちが多く浮世離れした生徒が多い。実際に僕も学園にコンビニがあったことだけでも衝撃的だった。だから、僕はこの研修でスーパーに行くことを密かに楽しみにしていた。 「お前ら、迷子になるなよ〜〜」  信楽先輩は普段から自炊しているらしく、スーパーにも休日によく買い物に行くらしい。こんな生徒は非常に珍しく、バーベキューの場では非常に重宝される。実際今回の班に信楽先輩がいなければバーベキューなど不可能だっただろう。  3人で食材を吟味していると、後ろから叫び声が聞こえてきた。誰がこんなに騒いでるのだろう、と呆れながら後ろを振り向くと意外な人物がいた。  「だから!着いてくるなって!」  「あんた、どうせ一人で買い出しなんてできないじゃないっすか。」  そこには、やたらと爽やかなイケメンと言い争いをしている悠里がいた。悠里も僕を見つけたらしく、「千花ちゃん〜!!」と言いながら駆け寄ってきた。彼が誰かと言い争っているところなんて初めて見たので少し驚いてしまった。  しかも……、よく見るとあのイケメン、マリモの取り巻きのサッカー部の男ではないか。なんとなく、警戒心が高まって、ちょっとだけ睨んでしまう。僕の視線に気づいたのか、イケメンは少し前に出て挨拶をした。  「こんにちは、初めまして。俺は一年の瀬良 唯です。サッカー部に所属しています。」  そのままぺこりとお辞儀をされて面食らう。なんていうか、あのマリモと関わっているくらいだからもっと非常識な人だと勝手に思っていた。  「おい、お前千花ちゃんに近づくなよ。」  「近づいてません。挨拶しただけです。」  二人はまたいがみ合いを始めた。悠里は常に笑ってヘラヘラしているイメージだったので、後輩に強く当たる姿は意外だった。  「二人って知り合いなの?」  僕がそう尋ねるとピキッと空気が凍った気がした。え、なに?地雷踏んだ?悠里は、ため息をつきながら顔をしかめて話し出した。  「………幼なじみ。」  幼なじみ、悠里にそんな存在がいたなんて初めて知った。あまり仲がいい幼なじみには見えなかったが、そこは自分も人のことを言えないな、とどっかの副会長さんを思い出しながら思った。
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