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長机が並べられた食堂では発掘作業に携わる関係者が入れ替わり立ち代わり食事に来ていた。  「真澄さん?あぁ、この村一番の有力者だよ。この村に先祖代々伝わるお社を守る家系なんだ」  見たこともないほどに艶々に光る山盛りのご飯を珍しそうに見つめながら慎は尋ねた。  「お社ってあの竹林の上にある?」  「えっ?そんな所にも何かあった?私が知っているのは麓にある大きなお社だよ。元々は奈良時代に造られたんじゃないかって言われてるものでね。きちんと修復を重ねて今でも現役で残ってるお社だよ。あれを見たら時代のロマンを実感するよね~」  お酒も入っていないのに悦に入っている工藤に本当に好きなんだなぁ、と慎は笑った。  「お社には真澄家一族しか入れなくて社の奥には真澄家に代々伝わる家宝の神剣が祀られてるんだって」  「神剣?」  「神剣自体は古墳時代に造られたものだけど錆一つ付かずに当時の姿を残しているらしくって私もぜひ研究にとお願いしたんだけど断れてしまったんだ。せめて一目だけでも拝ませてくれたら…」  がっくりと肩を落とす工藤に慎は笑うしかなかった。
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