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頭に畳んだ濡れタオルを乗せて慎は広々とした風呂の縁に両腕を掛けて気持ち良さそうに浸かっていた。  「そのまま寝るなよ~。相良」  「お先、な。慎」  風呂を出て行く中年男性や高校生のアルバイトなどに声を掛けられてぱらぱらと手を振る慎。一緒に湯船に浸かっていた工藤はそんな慎を感心して眺めていた。  「二日目にしてすっかり溶け込んでいるね。相良君」  お湯を掻いて隣に移動してくる工藤に慎はお疲れ様です、と挨拶をした。  「俺も不思議に思ってます。この村全体がすごく懐かしく感じて初めてな気がしないんですよね。だからかな?いつもに増して人にも簡単に話し掛けちゃうし。晄君にはしつこいくらい」  苦笑する慎に工藤は晄の名前に引っかかった。  「真澄さんとこの長男君とそんなに仲良くなったの?」  「今日、例の竹林の社で待ち伏せして話してました」  「その竹林の社、僕も今日見てみたけどあそこを上がって行くの、ちょっと怖くない?地元の人たちもあそこにはあまり近づきたがらないって聞いたよ」  「らしいですね。俺、全然気にならなくて。晄君にも普通の人間なら近づかないのにって言われちゃいました。俺って鈍感だからな~」  「それで、その社には何かあるの?」  「剣が祀ってあるって言ってました」  「剣?」  「力も魂も入っていない鈍らだけどって」  「ふ~ん。剣、ねぇ」  「すみません。工藤さん。俺、のぼせそうなんで先に上がりますね」  左右にふらつきながら出て行く慎を見送り工藤は一人腕を組んで考えていたのだった。
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