弟みたいな彼

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弟みたいな彼

あれから3週間経った。 雑誌が発売されて、学校行くと大騒ぎになっていた。 「水瀬さん、雑誌見たよ。すごく可愛い。あの彼もすごく格好いいよね。水瀬さんの彼氏なの?」 とかあんまり仲良くない子に話しかけられる。 a0d4ca73-8cc8-491e-a8fa-20b3471ff942 教室に入ると恵美が 「樹璃亜、これ見て!! やっぱりお似合い」 と言って雑誌を見せる。 恵美のまわりに皆んなが集まってくる。 私は恵美に 「もういいから」 と言って雑誌を閉じた。 ホント今日は落ち着かない日だった。 バイトに行くと店長が雑誌を見せる。 「水瀬さんと、翔太綺麗に撮れてるね。本当のカップルみたいだよ。水瀬さんのお父さんに見せてあげたいね。」 と言われた。 そこに橘君が入ってきた。 「水瀬さん、おはようございます。親父が今度の休みにお線香あげに行くって言ってるけど、大丈夫なんですか?」 「何か、お母さんと話をして決めたみたい。お母さんも楽しみにしてるみたいだった。お母さんも久しぶりにお父さんの話が出来るからかなぁ〜」 「俺も一緒に行くつもりなんだけど…」 「うん。待ってるよ」 こうして橘君達が家に来る事になった。 眠い目を擦りながら降りていくと 母が朝から何やら沢山のお料理の準備をしていた。 母にとってはお料理は大変なことじゃないので 楽しそうかな。 「樹璃亜、顔洗ってその辺の片付けてよ。」 「はぁ〜い」 と言いながらちょっとつまみ食い。 「こら、お行儀悪い」 「目が覚めるようにシャワー浴びてくるね」 と言って私はお風呂場へ。 c2cea1c5-5092-4727-bfb6-b8dc796c16ab よーし。さっぱりしたッ 下から母が読んでいる。 「樹璃亜、おりてきなさい」 「はぁ〜い」 と言っておりていく。 橘君とお父さんがたっていた。 わぁ〜 橘君のお父さん、橘君とそっくりだなぁ〜 彼がそのまま歳をとったって感じ。 「樹璃亜、ボォーとしてないでご挨拶しなさい」 「娘の樹璃亜です」 すると橘君のお父さんが 「樹璃亜ちゃん、こんなに大きくなったんだね。こんなに可愛くて先輩も見たかっただろなぁ〜」 「こんにちわ」と頭を下げると 母が 「そんな事無いですよ。おてんばで、翔太君もすっかり大人になって」 「こいつもまだまだ子供で」 「どうぞあがって」 橘君のお父さんと橘君が父にお線香をあげてくれた。 何か不思議な感じだった。 食事も終わったので、橘君と私は2階にあがった。 よくよく考えたら、男の子は部屋に入れるのは初めてだ。 ちょっと緊張してきたな。 「水瀬さんは、写真とか興味はないの?」 と橘君が聞いてきた。 「私はそんなにお父さんの事おぼえてないんだょね。小さい頃の写真はお父さんが撮ってくれたってお母さんが話してくれたけど、それに私は飽きっぽいから無理だなぁ」(๑˃∀˂๑)アハハ 「俺は撮るより撮られる方が好きだけど、いつかは撮ってみたいと思ってるよ」 「へえー橘君って、結構しっかりしてるって言うか大人だょね」 「俺が大人かぁ〜ナイナイ」ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ)アハハ なぜか、彼と話していると親近感と言うか弟みたいな感じって言うか不思議だなぁ〜 時間を経つのも忘れて、色々と話し込んだ。 すると下から橘君お父さんが、 「翔太、そろそろ帰るぞー」 っと声がした。 二人で下におりていく。 「樹璃亜ちゃん、またね。翔太をよろしく頼むね」 「あっ、はい」 「翔太君、また遊びにいらっしゃい。樹璃亜の事も宜しくね」 と母が言う。 何か私達は照れくさい感じがした。 「橘君、またね」 と言うと 彼も 「水瀬さん、明日バイトで」 と言って帰って言った。 それからは二人で出かけたり、彼のお芝居を見に行ったりとかする事多くなった。 恵美には相変わらずひやかされるけど、 気の合う友達の様な、仲のいい弟の様なそんな気持ちだった。 彼も未だに水瀬さんと呼ぶ。 私も橘君だけどね。 彼も役者として少しずつ出演する事が多くなった。 二人で出掛けた時も 《橘翔太さんですよね》 と声を掛けられる事も増えてきた。 そういう時は 「弟をこれからも応援して下さいね」 と言ってしまう。 FANの子達に勘違いされない様に姉の振りをする。 彼はそんな事しなくていいって言うけど… やっぱり私は気を使う。 彼の夢を応援したいって思うしね。 二人で出掛けるのはそろそろ厳しいかなぁ〜 と思っていた。 私も実習で忙しくなるのでバイトを辞めることにした。 高1の冬休みから始めたバイトだったけど 私も自分の道を歩かなきゃ。 彼とはLineや電話で話したりしているけど、 それも段々、出来な程お互い忙しくなっていった。 彼の事をTVや雑誌で見る事も多くなってきた。 恵美はたま〜に撮影が一緒になる事があるみたいだけど 彼が忙しくてゆっくりと話も出来ないって言ってた。 私も国家試験の準備もあったりと、 毎日忙しく過ぎていった。 そして無事ナースとして働く事になった。 卵ちゃんから新米ナースへ昇格。 恵美もモデルの仕事を減らしてナースとして頑張っていた。 恵美は同じ事病院で働こうって言ってたけど、 私は救命救急で働きたかったのだ。 最初は色々と経験を積んでから救命救急へと考えていたけど、新人でも大丈夫と言われ私は決めた。 母は反対だった。 時間も不規則で、残業も多く、忙しくて自分の時間が持てない様な働き方が嫌な様だ。 でも私はそこで経験を積んで、色々な事に対応できるナースになりたかった。 別にナースになりたくて入学した訳でも無かったのに 夢に向かって歩いている彼を見て刺激を受けたのだと思う。 毎日毎日、覚える事と何にも出来ない自分に苛立ちを覚えながらの日々が過ぎていく。 もちろん、恋愛もしている暇がない位、忙しい日々だった。 たま〜に忘れた頃に彼からのLineが来ていた。 私も忙しくてすぐには返事を送れないので その回数も少なくなっていく。 それを反するように彼のドラマ出演も増え、 今では主演にまで抜擢されていた。 母は料理研究家なので、TVに出てる事が多く、テレビ局で彼に会っている様だった。 久しぶりの連休。 働きだしてから連休が取れるのは初めてだった。 恵美と温泉に行く予定でとった連休だけど、 恵美が体調を崩して行けなくなった。 せっかくのお休みなので一人で温泉に行く事にした。 ca0effe5-3173-40af-b975-60fb85293c7e あ〜生きかえるぅw 一人でも来てよかったなぁ〜。 露天風呂から出て部屋に戻ろうとして時、 声をかけられた。 「水瀬さん?」 振り返るとそこには橘君がいた。 えっ!! 「橘君?」 「水瀬さん、旅行?」 「恵美と来るはずだったんだけど、恵美が体調崩して、せっかくの連休だから一人で来てみた」ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ) 「そっかぁ〜。彼氏とデートかと思った」 「仕事が忙しくて彼氏作る暇ないよ。橘君こそ、彼女さんと?」 橘君の隣に可愛い女の子いた。 「あっ!! 俺は撮影だよ。彼女は共演者の森川菜々さん、」 私は頭を下げる彼女をみた。 えっ!! そこには今人気の女優の森川菜々だった。 うわぁ〜めっちゃ可愛い。 「水瀬さん、久しぶりに夕飯でもどう?」 「私はいいけど、撮影大丈夫なの?」 「今日の撮りは終わったから大丈夫だよ。後で部屋に迎えに行くよ。部屋いくつ?」 「3012だょ」 「じゃあ19時頃行くよ。じゃあ後で」 と言って彼女と行ってしまった。 暫く会わない間にちょと男らしくなった気がした。 あの金髪チャラ男と思ったのが遠〜い昔のように思えてきた。 ピンポーン… 「どうぞ」 「水瀬さん、入るよ。」 「ホント、久しぶり。ちょと見ない間に結構男らしくなったね。私なんか全く変わらないけど」 「水瀬さんは…」 「何よ。言葉詰まって、変わってないって言いたいんでしょ」 「いや、そうじゃなくて変わってなくてよかったよ」 「私は成長しないからね」 「そういう意味じゃないし」 「ご飯食べながらゆっくり話そ」 と私は言って二人で部屋を出た。 すると、いきなりシャッター音が聞こえた。 私と橘君の写真を撮って逃げていったようだった。 橘君が追いかけたけどつかまらなかった。 「水瀬さん、ごめんね。最近パパラッチがウロウロしてるみたいで」 「私は大丈夫だけど、橘君はそれだけ有名になったって事だよね。私を撮っても意味ないしꉂꉂ(ᵔᗜᵔ)」 食事場所に向かいながら 「二人で出かけてた頃もFANの女の子に声かけられたりあったょね。私はお姉さんの振りして、懐かしいな」 「俺はいいって言っても水瀬さん、やってるから…」 「やっぱり、FANの子を悲しましちゃいけないもんね。今はホント毎日TVでみれるしね。サインもらっとこうかな」 「水瀬さん、」 和食のお店についた。 個室を予約してあったみたい。 「お店とか予約出来るようになったのね。橘君も大人になったか」 「水瀬さん、俺の事馬鹿にしてるでしょ」 「馬鹿になんかしてないよ。ちょと驚いた」 「うんっ、驚いた?」 「キラ☆キラしていた男の子が、スマートな大人の男になったっていうか、私もおばさんになっちゃうよねぇ」 「俺は水瀬さんの事、おばさんとか思わないから、初めてあった時のまま素敵だなって」 「ほら、そう言う事を言えるようになったのが大人になったって事だよ」 「ホント俺の事、信じてないんだから」   何か、昔に戻ったみたいで楽しい時間が過ぎていった。  その日は夜遅くまで昔みたいに沢山話した。 疲れてそのまま寝落ちしてしまった。 朝、目が覚めるとメモが置いてあった。 《昨日は久しぶりに会えて楽しかった。撮影で朝早いので挨拶も出来なかったけど、帰ったらまた会おう》 と書いてあった。 今まで橘君の事、あんまり気にしていなかったのにメモを見てちょとだけ嬉しい気持ちになっていた。 そして彼からの連絡を待っている私がいた。  
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