初めてのKiss

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初めてのKiss

最近、いつも誰かに見られてる様な気がする。 それも記者とかではない誰かに… TVのワイドショーでもだいぶ落ち着いて来たのに。 橘君はドラマや映画に忙しく、休みもないくらい頑張っていた。 合間をみつけて、電話やlineを毎日してくれていた。 私も相変わらず慌ただしい毎日を送っていた。 なのに、最近いつも誰かに見られてる様な、 つけられてる様な何か不気味な感じがした。 でもはっきりとした正体はつかめないでいた。 ストーカー?? でも私にストーカーするわけ無いか そんなある日、仕事から家に帰ると、家の前に何人かの女の子が立っていた。 なんか嫌な予感。 家に入ろうとすると 「水瀬さんですよね。」 と20代の可愛らしい女の子に声をかけられた。 「あっ、はい。」 と言うと 「橘翔太さんとはただの幼馴染みなんですよね?」 「ええーまぁ〜」 「私達、森川菜々ちゃんのFANなんです。あの雑誌騒ぎで菜々ちゃんが、落ち込んでいて」 私は全く何が何だかわからなく、不思議そうな顔をしていた。 すると女の子達は 「菜々ちゃんと、翔太さんは付き合っているんですよ。幼馴染みかなんか知らないけど、横から邪魔しないで下さい。今度菜々ちゃんを泣かせたら手加減しませんからね」 と言って帰っていった。 私は仕事でクタクタで、彼女達の言ってる事が理解できなかった。 その日は疲れていてそのまま寝てしまった。 朝、起きてTVを観ると… 【森川菜々、橘翔太の家に通い妻】 とかやっているではないか。 そう言えば昨日、何か言ってた事を思い出した。 そういう事なのかと思っていたら 橘君から電話。 「水瀬さん、TVの話は嘘だから誤解しないで」 と言われる。 私は昨日の出来事を橘君に話した。 橘君もその話を聞いて驚いていた。 橘君の話を聞いてみると、 森川菜々は橘君と同じマンションに住んでいた。 最近、引っ越して来たようだ。 映画やドラマの共演も多く、恋人役も何度となくやっている。ベストカップルとか言われている。 森川菜々が引っ越して来た事は知られていないので、橘君のマンションに出入りしてると思われている様だ。 彼女は全く、否定もせず『仲良くさせてもらってます』と話してるらしい。 相当鈍い私でも森川菜々は橘君の事が好きなんだとわかってしまう。 めっちゃ可愛い子だし、確かに橘君とお似合いなんだろうな。 私は平凡だもんね。 彼女のFANが文句言うのも仕方ないかもなぁ〜 dbe6791f-336c-4a81-aca1-27f46d98b81b 病院に行くと先輩ナースに 「水瀬さ〜ん、橘翔太の彼女じゃなかったのねぇ〜。森川菜々と半同棲なんて凄いよね。あの二人はお似合いだよね」 「ホント、お似合いですよね」 と苦笑いをした。 今日はこの事ばかり皆んなに聞かれる。 一人になりたくて休憩時間に旧病棟の屋上に行った。 一人でのんびりしてると後ろから声を掛けられた。 「あれ〜先約が居たかぁー。水瀬さん、珍しいね」 振り返ると研修医の山村Drだった。 「あっ、お疲れ様です」 「水瀬さん、ここにはよく来るの? 俺は、一人になりたい時によく来るんだよ」 「私も先生と同じです」 「そっか、なんかあった?」 「いや、何にもないけど、ちょっと一人になりたかったので」 「じゃあーお邪魔しちゃったね。悪かったな」 「いえいえ、とんでもない。先生こそ一人になりたいのに私がいたので…あっ、もう行きますね」 と私が言うと 「これ一緒に飲まない?」 と言ってコーヒーをくれた。 「いただきます」 と言ってベンチに座った。 山村Drも隣に座った。 「仕事はどう?楽しい?大変?」 と聞かれ私は 「大変だけど楽しいですょ。まだまだ役にもたたないんですけどね」 と言って笑った。 「俺も同じだよ。キツイし給料安いし、休みも無い。でも毎日楽しいかもな。水瀬さんとこんなに話した事無かったね。またここで話そうよ」 「はい。是非また。休憩終わっちゃうのでお先に失礼しますね」 「あー俺もだ」 久しぶりに何にも考えずに笑えた気がした。 山村Drに感謝だなぁ〜 家に帰ると橘君が来ていた。 「水瀬さん、お帰り〜」 「橘君、大丈夫なの?お茶の間の話題の俳優さん、家なんかに来て」 「翔太君、この子ホントに可愛気無いわよね。家なんかって…」 「何か、俺の事を誤解してるでしょ」 「してないよ。でも芸能人は大変だなってね。それに彼女は橘君の事が好きなんだなぁって」 「俺は森川さんの事、共演者同じ役者仲間だと思ってるけどな。それに告白もされてないぞ」 「ホント、橘君は女心がわかってないなぁ〜。彼女は橘君が好きだからおなじマンションに引っ越して来たんだよ。私の事もあったからマンションに私が出入りしてるかもと思ってるかもだし…」 「俺はね。水瀬さんの事が」 「ちょっと待って、その後の言葉は今は聞きたくない」 「なんでだよ」 ちょっと怒った様な顔で壁ドンされた。 c91e81f2-368e-493b-983a-b967489c6e17 うぁっ何!! そしてKissをされた。 ドラマの撮影か、イヤ、私は女優じゃない。 えっ!! 今何が起こった? 私は頭ん中で、パニックを起こしていた。 橘君が 「ごめん」と言った。 私は 「謝るくらいならKissなんてしないでよ」 と逆ギレ気味に言った。 そして橘君はもう一度優しくKissをした。 この日から私達は翔太と樹璃亜と呼ぶようになった。 でも付き合うとか、好きとかはっきりと言わないままだった。 TVで連日、森川菜々との話題が流れていた。 翔太と私は外で会う事が出来ないので 翔太の時間ができた時、家に来てくれた。 あれ以来、Kissもしてないし、それ以上の事もない。 ただ、くだらない話や一緒に映画を観たり、ゲームしたり… そんなデートだった。 あ〜 まだ付き合おうって言ってないからデートじゃないのか?? まぁ〜 翔太とは一緒に居たいと思ってるだけで 私はそれ以上の事は望んでいなかったのだろう。 そう言えば最近、山村Drとも旧病棟の屋上で、 おしゃべりをする様になっていた。 研修医はホントに忙しくて大変そうだった。 2年間はホントにキツイ様だ。 特に救命は休む暇もない位患者がやってくる。 私だって3年目でまだまだって思う。 Drの方が何倍も大変だと思う。 でも山村Drとはなしていると、色々と勉強にもなる。 私ももっと勉強しておけば良かったなって つくづく思い知らされる。 看護師になったのも母に言われてだし、 母と同じ土俵には立ちたくないって思って、 母とは違う仕事にした。 救命だって、半分テレビの影響かなぁ〜。 キツイのは覚悟してたので… 辛くはないけど、何にも役に立たないのが辛いな。 少しはマシになってきたけど、まだまだだょね 。 こんな日々が毎日続いていた。 翔太は相変わらず忙しくて、月に1回会えればいいような… 電話も一週間に1回、ゆっくり話せる日があるかないかのようで… 森川菜々との熱愛報道は続いていた。 付き合ってる私でも続いてるんだぁ〜と思ってしまう事もある(笑) お陰で記者やFANの人が私の周りをうろつく事は無くなった。 こんな生活が一年位続いていた。 この一年に会ったのはたったの3回。 もっぱらお家デート。  記念日・誕生日等のイベントにはプレゼントが届いていた。 でも一緒に過ごした事は無かった。 私も気を紛らわす様に仕事を入れていた。 同僚達も喜んでくれるし、周りは彼氏はいないと思っている。  私もそれの方が楽でいいと思ってたけど… 事件?? 不幸?? 何の前ぶれも無く、突然やってくる。  まさか、こんな事が起きるなんて思ってもいなかった。
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