旅館の女

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僕は車を四時間走らせ、ようやく宿泊先の旅館に着きました。 素泊まり二千円の旅館というから、ものすごく古くてボロい旅館をイメージしていたのですが、その旅館はそれほどに古くなく、素泊まりするには十分なところに思えました。 僕は早速、旅館に入り、そこで四十代くらいの女将さんに挨拶すると、宿泊の支払いを済ませ、とりあえず部屋に荷物を置きにいったのです。 僕の部屋は一階の日当たりの良い八畳間の畳の部屋で、最悪の部屋を予想していた僕は意外なほどに良い部屋に少し驚いていたのです。 「良い部屋ですね」 僕がそう話しかけると女将さんは優しそうな顔で笑っていました。 「そう言ってもらえるとうれしいです。 昔はよくS神社に恋愛成就を祈願しにくるカップルがよく泊まっていたんですよ」 「今はあまり来られないのですか?」 僕がそう言うと、優しそうな女将の顔があからさまに曇っていました。 「ええ、以前ほどには……」 僕がこの旅館の駐車場を見た限りでは、この旅館に宿泊客はほとんどいないと思えました。 僕はこの旅館に悪い印象がないのですが、なぜだかこの旅館は不人気で閑散としていたのです。
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