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「田嶋……、紗耶香……」
背後から私の名前を呼ぶ微かな声が聞こえてゾッとしました。
そして私は、今聞こえてきた女の声が空耳ではないかと思ってみましたが、やっぱりさっきの声は空耳ではありません。
私の背後に誰かがいるのです。
不安な気持ちを抱えた私が暗くなった部屋の中で、月明かりの射す窓に目を向けると、その窓には映っていてはいけないものが映っていて、私の体は恐怖で凍りつきました。
そして私が声を上げて、その場から逃げようとした次の瞬間、私の後ろに立つ足立真奈美の幽霊が、氷のように冷たい手で、私の首を思いっきり絞めつけてきたのです。
私はあり得ないことが起きた恐怖の中でパニックに陥り、呼吸ができない息苦しさに悶えながら、私の首を絞めつけている二つの手を必死に振り払おうとしていました。
でも、氷のように冷たい二つの手はものすごい力で私の首を絞めつけ、私の力では振り払うことができなかったのです。
それどころか、その二つの手は私の首に深く食い込み、息苦しさは増していくばかりです。
今のこの状況で私を助けてくれる人は誰もいません。
暗くて誰もいないはずの自室の中で、私が死の恐怖と戦っているなんて、想像している人すらいないのです。
窓に映る足立真奈美の幽霊は不気味に笑い、私が苦しんでいるのを楽しんでいるように見えました。
やがて私は息苦しさの中で脱力し、真奈美から逃れるのをあきらめ、その場で意識を失ったのです。
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