金縛り

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その日は何もしなくても汗が流れるような暑い日でした。 ようやく噂の廃病院に着いた私たちは、廃病院の近くの空き地に自転車を置き、孝尚に誘われるままに正面玄関の方に歩いていていったのです。 その廃病院は幽霊が出ると噂されるだけあって、かなり古くて、中に入るのをためらうような気味の悪い建物でした。 「ここが噂の廃病院だぜ。 本当に幽霊が出たらビビるよな」 「幽霊が出たら写真を撮ろうぜ。 そしたらみんなに自慢できるよ」 心霊スポットが好きな孝尚と正則の男子二人は、不気味な廃病院を前にしても楽しそうに笑っていました。 でも私は見るからに幽霊が出そうなその廃病院に正直、怯えていたのです。 ひび割れた鉄筋コンクリート造の五階建ての廃病院は、おそらく埃まみれで、クモの巣だって張ってあるに違いません。 それにネズミや猫やその他の動物が住み着いている可能性だってあるはずです。 さっさと肝だめしを終わらせて、早くこの場所から帰りたいというのが偽らざる私の本音でした。 でも、そんな風に怯えて、恐怖を感じている私の考えと、みんなの考えは違っていました。 そしてこれから始まる肝だめしは、私が期待していることの真逆の方向に進み始めていたのです。
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