金縛り

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廃病院の中は最悪の状態でした。 何年も使われていない廃病院は予想通り埃っぽくて、至るところにクモの巣が張っていました。 しかも夏の気温のせいで蒸し暑く、止めどなく流れる汗が体にまとわりついて不快でした。 私は足早にこの廃病院内を歩いて、できるだけ早く肝だめしを終わらせたかったのですが、コンクリートに囲まれている無機質な廃病院内が恐ろしくて、なかなか前に進むことができません。 ゆらゆらと揺れる懐中電灯が照らす視界の幅はとても狭くて、視界の外の暗闇から何かが襲ってきそうな気がしてきます。 それでも私は少しずつ恐怖を克服し、その場の雰囲気や環境にちょっとだけ慣れてきました。 廃病院に入ってから十分後、私はかなり冷静さを取り戻し、坦々と廃病院の中を歩いていました。 これならば、かなりの怖さを感じるものの、きっと廃病院を出ていけると、私は感じていたのです。 でもそのとき、微かな女の子の笑い声が真っ暗な廃病院の廊下で聞こえたのです。 私はその女の子の笑い声にドキリとして立ち止まり、じっと耳を澄ませながら、ゆっくりと懐中電灯で辺りを照らし始めました。 すると、今度はさっきよりも鮮明に女の子の笑い声が廃病院の廊下に響いたのです。
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