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もう何年も使われていないその手術室は荒れていました。
床のあちこちに道具が散乱していたし、壁にはいろんな色のスプレーで落書きがされていました。
おそらくこのスプレーの落書きは、私と同じように肝だめしをしにきた若者が、イタズラで書いていったものなのでしょう。
私はそんな荒れ放題の手術室にとても嫌な感じを覚えていました。
でも、ワンピースの少女はそんな私の気持ちを無視するように、私を手術室の中央へと誘導しました。
そしてワンピースの少女は手術室のベッドを指差して「ここに寝ろ」と、私に指示をしてきたのです。
私は怖くて早くこの手術室から出ていきたいと思っていましたが、私の足は私の気持ちを無視して、私をベッドへと運んでいきます。
そして私が招かれるままにベッドに横になったとき、私の体が急に重くなり、私は体のどこの部分も動かせなくなっていたのです。
それは金縛りと呼ぶにはあまりにも強力すぎて、まるで何かの呪いにでもかかったかのように、声も出せず、指一本すらも動かせない状態でした。
ただ眼球だけは動かせたので、私は真っ暗な手術室の様子を探るように目をキョロキョロさせて、必死に助けを求めていました。
でもそのとき、さっきまで誰もいなかったはずの手術室に白衣を着た不気味な男が何の前触れもなく現れたのです。
その不気味な男の顔は青白く、とても血が通っている生身の人間には思えません。
そしてその血色の悪い男の手には、なぜだかメスが握られていて、まるで今から手術でも始めるような素振りを見せたのです。
「ねぇ、お姉ちゃん。
私はあの先生にお腹を切られたんだよ」
ワンピースの少女はいつの間にか私の頭の近くに来ていて、耳元で囁いていました。
「それでね、私のお腹からたくさんの血が出たの。
このベッドが真っ赤に染まるくらいに……」
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