5分で読める怖い話

金縛り

私はようやく自分が置かれている状況をハッキリと理解し、しだいに自分に迫ってくる死の恐怖に怯えていました。

きっとこの手術室は呪われた手術室なのです。

あのワンピースの少女にこの場所に誘われた人はきっと、まるでクモの巣にかかった虫のように体の自由を奪われて、殺されてしまうのでしょう。

私は白衣の男が手にしているメスが私のお腹を切り裂く前に、どうにか悲鳴を上げ、自分の足で逃げていくことを考えていました。

私が今までにかかったことのある金縛りは、いつの間にか、ふっと解けて、私の体をまた自由にしてくれたのですが、今回の金縛りはまるで強烈な重力が私の体を押さえつけているみたいに、少しも私の体を自由にはしてくれません。

孝尚や正則や萌花は、もう廃病院の外に出たのだろうかと私は思いましたが、私には彼らの動向を調べる手段も、私の窮地を彼らに伝える手段もないのです。

運を天に任せたとして、彼らが私を救いにくる確率は、一万分の一もないのです。

すべてが絶望に思える状況の中で、白衣の男の手に握られているメスが少しだけ私のお腹に触れました。

そのとき私は全身を恐怖で包まれながら、ようやく声を出し、悲鳴を上げることができたのです。

そして私が泣きながらわめき散らしていると、いつの間にかあのワンピースの少女も白衣の男もいなくなっていました。

金縛りが解けて、ようやく動けるようになった私は、フラフラになりながら、廃病院の外へと逃げたのです。

そして廃病院の外に逃げられた私は、仲間たちの顔を見て安堵し、さっきまでの恐怖でガタガタと体が震えていることに気づくと、もう二度とこの廃病院には近寄るまいと心に固く誓っていたのです。