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部屋に荷物を片付け、私は早速、おばあちゃんと二人でおばあちゃんの家を見て回りました。
おばあちゃんの家は部屋がたくさんあって、しかも広かったので、都会の狭いマンションしか知らない私にはとても新鮮でした。
そして広い家に興奮してはしゃぐ私を見て、おばあちゃんはニコニコ笑い、よろこんでいたように思います。
私はおばあちゃんの家の二階の廊下から見える瓦の三角屋根の小さな建物が気になり、おばあちゃんに訊ねました。
「おばあちゃん、あそこに見える小さな建物は何?」
「あれは蔵だよ」
「蔵? それって何?」
「簡単に言えば、おばあちゃんの家の物置小屋だよ。
あそこには古くからこの家にあるいろんなものが置いてあるの」
「おばあちゃん、私も蔵に行ってみたい。
いいでしょ?」
優しいおばあちゃんは私の言うことを聞いてくれるものだと思っていました。
でも、そのときだけ、おばあちゃんはこう言いました。
「あそこはダメだよ、春花。
あそこには手に取ってはいけないものもあるから」
その後、おばあちゃんに何度頼んでも、おばあちゃんは蔵に行くとは言ってくれませんでした。
でも、まだ小学三年生だった私は、おばあちゃんに行ってはいけないと言われれば言われるほど、あの蔵のことが気になっていました。
私とおばあちゃんがおばあちゃんの家を見て回った後、おばあちゃんとお母さんが話を始めたので、私は外に遊びに出かけました。
そして近くの河原や野原を見て歩いた後、おばあちゃんの家に戻ってくると、私は視界に入ってきたあの小さな蔵がどうしても気になって、あの蔵へと向かっていたのです。
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