旅館の女

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今から五年前、僕が担当している雑誌の恋愛特集を書くために、僕は全国の縁結びスポットの取材にいくことになりました。 今も昔も恋愛や結婚に興味がある若者はたくさんいます。 そして懸命に神頼みをしてでも、好きな人と結ばれたいと思っている人は意外なほどに多いのです。 僕が取材することになった某県の有名な神社は、恋愛成就、縁結び、安産、子授けなど様々なご利益があると言われていました。 日帰りでは行けないような他県への取材なので、一泊するための宿がどうしても必要になります。 そこで会社が僕に用意したのは、素泊まり二千円の激安旅館。 確かに小さな出版社で、それほど経費が出せないとしても、素泊まり二千円はないだろうと、僕は心の中で思っていました。 とはいえ、僕も新米記者でまだ見習いのような立場なので会社に強く意見できるはずもありません。 そして僕は月曜日の昼から車を走らせ、取材先へと向かったのです。
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