旅館の女

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「この旅館の近くにコンビニはありますか?」 「はい、ありますよ。 この旅館から右に曲がって五分くらい歩けばコンビニです」 「ありがとう。 後で行ってみます」 僕はコンビニでビールとおつまみを買う予定を立てて、ホッと一息ついていました。 窓から見える庭の景色はそれなりに綺麗でしたし、予想より部屋が良かったことに安心していたのです。 そして僕が車の運転の疲れを癒そうと座布団に腰かけたとき、女将さんは後付けするみたいに僕にこう言ってのです。 「それからお客様、この旅館の二階には決して行かないで欲しいのです」 「それはどうしてですか?」 「じつは……、改装中でして、足元が危なくなっていますので……」 営業中の旅館の二階が改装中だというのもおかしな話だと思いましたが、僕は女将さんの話にうなずき、その話題を何となくスルーしたのです。 きっと暇な旅館だから二階は使わなくても良いのだろうと、僕は考えていたのです。
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