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「美奈子はね、私たちを憎んでるよ。
美奈子は私たちに何も言い返せない臆病な奴だったけど、美奈子はずっと私たちを憎んでいたの!」
「どうしてそんなに慌ててるの?
別に美奈子に憎まれても関係ないじゃん。
あいつには仕返しなんてできないよ」
「そんなことない!
私は美奈子に殺されそうになったの」
「ウソでしょ?
美奈子にはそんなことできないよ」
「紗耶香、私の話を疑わないで聞いて欲しい」
受話器から聞こえてくる聡子の声はいつになく真剣でした。
私はそんか聡子の話にじっと耳を傾けていたのです。
「私を殺そうとしたのは美奈子の幽霊だよ。
もしかしたら、美奈子はもう……」
聡子が私に何かを言おうとしている途中で、聡子からの電話が急にプツリと切れました。
受話器から聞こえてくる「ツーツー」という音が、何だか不気味に私の耳に届いていました。
聡子が私に言った美奈子の幽霊って、いったい何?
聡子は私を怖がらせようとしているの?
それともあの美奈子が本当に死んだの?
私はその答えが出ない漠然とした疑問に不安を抱えながら、受話器を電話に戻しました。
『美奈子は私たちを憎んでいる』
聡子のその言葉が心の中にとどまって、どうしても消えようとはしませんでした。
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