あたしだけが知らない

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枕に顔を埋めて、結局何一つ進展しなかった今日一日にあたしは思いを巡らした。 (早起きしたのに!) 小さく毒づいて枕に頭突きを喰らわす。 枕に押し付けたおでこで存在を主張する前髪の感触が憎たらしいが心地いい。 木綿糸程の太さも持たないくせに、その感触は「あたしはここに居るぞ!」とばかりに心地良い感触を苛つくあたしのおでこに擦り付けてくる。 「早起きしたのに!」思わず声に出して乱暴にひたいを枕に擦りつけた。  前髪が存在を主張してくれたがそれだけ。慰めにもならない無駄な行為をやめてがばと身を起したあたしは薄手のカーディガンを羽織ると玄関のカギを開けた。
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