それでもお兄ちゃん

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  「あなた面白いわ、興味が湧いてきた」  秋風さんが言う。一体なんの話だ?  講義が終わり、みんなが自分の教室に引き上げる準備中。先生方の講義のせいで、大分みんなぼーっとしているようだけど。  秋風さんは眼鏡を外してケースに仕舞った。眼鏡を外すと更に物凄い美少女。このまま漫画のヒロインでも通じてしまう素敵な容姿だ。  秋風さんのノートは本当にびっしりだ、すごい勢いで書いてたもんな。 「ねぇ沖田さんは全部経験済みだったりして」 「やだ、もうバージンじゃないって事?」 「だって彼氏がいるもんね」  まただ、さっきコソコソ言ってた3人組だ。わざとらしくこっちを見てる。 「あんたたちバカ?」  私が何かを言い返そうとしたところに、秋風さんが言い放つ。 「先生の講義で赤くなったり青くなったりしてるこの子がそんなわけないでしょ。そんな事も分からないの?不細工の低脳ね」 「ぶ…!」 「あなた達今、鏡を見るといいわ。相当醜い顔をしてるわよ。人の陰口を叩く不細工って余計に見られたもんじゃないわ。そのゲジゲジ眉やニキビ面、ソバカスにめちゃくちゃな歯並びをなんとかしてから悪口を言うのね。不細工の癖に図々しい、あなた達のようなブスには人の悪口を言う権利なんて無いんだからね」  クール美人の秋風さんが言うと超破壊力があるな。言われた3人組は一切反論も出来ずに”うわぁーん”とか泣きながら部屋を出て行った。 「ふん、ブスが」  周りで見ていた人達もすごすごと去って行く、触らぬ神に祟り無しって風情だ。  この人本当に秋風(あきかぜ)だ、ただし台風の方。 「帰りましょ、洸さん」  そう私に笑いかける秋風さん、その笑顔がとても素敵だった。  この時から彼女は、私の人生におけるかけがえのない大事な友人となった。
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