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物心ついた時には側にいた。
同い年の私の従兄弟、出雲 櫂。
「洸、この本の続きはどこだ?」
「あっちの本棚の二段めよ」
いつものように私、沖田 洸の部屋には櫂がいた。私は自分の学習机でお絵描き中、櫂は私のベッドでマンガを読んでいる最中だ。中学一年生の春の頃だった。
「これ面白いな、絵も綺麗だ」
櫂がベッドから降りて棚の方に行く。
「櫂も好きだと思った。3巻まで出てるの、続き買ったら見せて」
「分かった」
私と櫂はマンガ本や小説を共用で持っている。買った本は主に私の部屋にあるあの本棚に置いてあった。
「櫂、最近なんかお話書いてる?」
「いや、お前は?」
「イラストだけちょこちょこ」
「後で見せてくれ」
櫂のお話は好きなんだけどな、そのお話に合わせたイラストを描くのがとても楽しい。
「あ、お兄ちゃんお腹減った」
「またかよ」
「お願いしま〜す!チャーハン食べたい♪」
しかたないなという風に櫂が階下の台所に降りていく。櫂のチャーハンは美味いもん、ここに友達の隆成がいたらきっと悔しがる。
あ、炊いたご飯あったっけ?
結局私も階段を降りた。
「こら、洸!あんた又、櫂にご飯作らせて!」
「えっ、お母ちゃん帰ってたの!?」
まだお仕事のハズじゃ無かったの?今日は随分お早いお帰りね。櫂はお母ちゃんの後ろで何事も無かった様に長ネギを刻んでいる
「あんた一応女なんだから、いつまでもお兄ちゃんにご飯作らせてないで自分で作りなさい!当然お兄ちゃんの分もね!」
「え〜〜〜」
「おばちゃん」
そこに櫂が口を挟む。
「洸に任せたらふりかけご飯しか出てこないよ」
さすが生まれた時からのお付き合い、全くその通りだけど。いや卵かけご飯も作れるよ、お母ちゃんが固まるけど。
「おばちゃんの分も作るからね。ちょっと待ってて」
やさぐれた母子には目もくれず、櫂はマイペースでチャーハンを作り続けていた。
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