そばにいるよ

7/7
前へ
/257ページ
次へ
 櫂が心配な自分は、泣きながらハンカチで櫂の傷を押さえる。櫂が嫌がって手で払われた。 「大丈夫だ、大した怪我じゃないからさ。それより向こうが3倍以上やられてるから」  隆成はそう言ってるけど。  その内、別の先生に連れられて泉が来た。本当だ、櫂よりも顔が傷だらけ…眼の周りがもう完全に腫れている。 「泉からも話は聞いたけど、なんかお互い様って感じだけどな」 「……」 「だが、暴力はいけない。力の暴力も言葉の暴力もな、二人とも放課後に美術室で大掃除1週間ね」 「えーーー?」  露骨に嫌な声を出したのは泉だ。 「親を呼ばれるのとどっちがいい?」 「すいません、毎日来ます」  泉は保健室に連れて行かれた。 「お兄ちゃんも保健室行こう」 「いいよ、大した傷じゃないから。先生、教室に戻ってもいいですか?」 「うん、放課後忘れるなよ」 「はい」  櫂が私の手を握って職員室を出た。隆成と優希もついてくる。 「お兄ちゃん」  私は保健室に行って欲しかった。つい学校では余り呼ばないお兄ちゃんと呼んでしまう。   「なんでさっさと来なかった、さっきのグループ分けの時」 「え」  櫂が足を止めた、手も離されてしまう。 「あんなヤツに気安く触らせるな、俺が気分悪い」 「お兄ちゃん…」  櫂が怒ってる、そのまま一人でどんどん行ってしまった。 「あらら相当怒ってんな、仕方ないな。洸は優希とゆっくりこい」  隆成が櫂を追って行った。   「洸ちゃん、泣かないで」  黙り込んでしまった私を優希が気遣ってくれる。 「櫂ちゃんは洸ちゃんが心配だったんだよ、グループ分けの時も洸ちゃんの事をじっと見てたもん。ほら行こ」 「うん…」  優希に手を引かれ歩き出す。優希も私より背が10cmくらい低いが、それでもグイグイ引いていく力はちゃんと男の子だ。 「なんかね、行こうと思ったら櫂たちの所に女の子がいたの。だからまずいかなって…」 「あの子ね、櫂ちゃんが好きらしいって隆ちゃんが言ってた」 「え…?」  櫂を好きな女の子? 「グループ入れてって来たけど、もう決まってるって断ってたんだよ。僕も洸ちゃんを迎えに行こうと思ったら櫂ちゃんの方が早かった」  それであの騒ぎなんだ。 「相変わらず櫂ちゃんは洸ちゃんを大事にしてるもんね」 「うん…」  ごめんねお兄ちゃん、私がモタモタしてたからだ。  ごめんなさい…
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加