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櫂が心配な自分は、泣きながらハンカチで櫂の傷を押さえる。櫂が嫌がって手で払われた。
「大丈夫だ、大した怪我じゃないからさ。それより向こうが3倍以上やられてるから」
隆成はそう言ってるけど。
その内、別の先生に連れられて泉が来た。本当だ、櫂よりも顔が傷だらけ…眼の周りがもう完全に腫れている。
「泉からも話は聞いたけど、なんかお互い様って感じだけどな」
「……」
「だが、暴力はいけない。力の暴力も言葉の暴力もな、二人とも放課後に美術室で大掃除1週間ね」
「えーーー?」
露骨に嫌な声を出したのは泉だ。
「親を呼ばれるのとどっちがいい?」
「すいません、毎日来ます」
泉は保健室に連れて行かれた。
「お兄ちゃんも保健室行こう」
「いいよ、大した傷じゃないから。先生、教室に戻ってもいいですか?」
「うん、放課後忘れるなよ」
「はい」
櫂が私の手を握って職員室を出た。隆成と優希もついてくる。
「お兄ちゃん」
私は保健室に行って欲しかった。つい学校では余り呼ばないお兄ちゃんと呼んでしまう。
「なんでさっさと来なかった、さっきのグループ分けの時」
「え」
櫂が足を止めた、手も離されてしまう。
「あんなヤツに気安く触らせるな、俺が気分悪い」
「お兄ちゃん…」
櫂が怒ってる、そのまま一人でどんどん行ってしまった。
「あらら相当怒ってんな、仕方ないな。洸は優希とゆっくりこい」
隆成が櫂を追って行った。
「洸ちゃん、泣かないで」
黙り込んでしまった私を優希が気遣ってくれる。
「櫂ちゃんは洸ちゃんが心配だったんだよ、グループ分けの時も洸ちゃんの事をじっと見てたもん。ほら行こ」
「うん…」
優希に手を引かれ歩き出す。優希も私より背が10cmくらい低いが、それでもグイグイ引いていく力はちゃんと男の子だ。
「なんかね、行こうと思ったら櫂たちの所に女の子がいたの。だからまずいかなって…」
「あの子ね、櫂ちゃんが好きらしいって隆ちゃんが言ってた」
「え…?」
櫂を好きな女の子?
「グループ入れてって来たけど、もう決まってるって断ってたんだよ。僕も洸ちゃんを迎えに行こうと思ったら櫂ちゃんの方が早かった」
それであの騒ぎなんだ。
「相変わらず櫂ちゃんは洸ちゃんを大事にしてるもんね」
「うん…」
ごめんねお兄ちゃん、私がモタモタしてたからだ。
ごめんなさい…
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