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美術室掃除の罰則を受けた櫂を教室で待つ。
一緒に隆成と優希も待っていてくれた。
「お前をほっぽっておくとあとが怖い」
渋い顔で隆成が言っている、それどういう意味だろう。
でもちょうどいいや、隆成に聞きたかった事があるんだ。
「隆成、あの子ってどんな子なの?」
さっき優希に聞いたばかりの櫂を好きな子の事が気になった。
「ん?ああ、あれね。お前は気にしなくていいよ」
なんで?ものすごく気になるのに。
「さっきの騒ぎで引いちゃったから。あんなシスコンは嫌だって」
「ひどい」
櫂は私を守ろうとしただけなのに、それをシスコンって決めつけるの?
「まぁ気にするな、間違ってはいない」
ちょっと隆成…!
ガラッと教室の扉が開く。先に帰って来たのは泉だった。私を見てぎょっとしている。
「あ…沖田」
「なぁに」
何か御用でも?それよりうちのお兄ちゃんを知らない?
「さっきはごめんな、悪気は無かったんだ」
「うん」
本当にそんなのはどうでもいいよ、それよりお兄ちゃんだ。
「じゃ、じゃあなー!!」
ダッシュで泉が教室を出ていった。分かりやすいな〜今回、余程懲りたのね。これから関わらないでくれると嬉しい。
泉が来たならお兄ちゃんもすぐよね、お兄ちゃんの教室に行こう…
自分のカバンと、帰りに櫂のお母さんの病院に持っていく荷物を持って立ち上がる。隆成と優希も付いてきた。廊下に出ると、ちょうど向こうから櫂が来た。
「櫂」
こっちを見たけど返事もしてくれないや、まだ怒っているのかな。
櫂も自分のカバンとお母さんの荷物を持っている。二人で半分にして持っていた分だ。
「おい櫂、俺も優希も帰るぞ。じゃあな」
え?この雰囲気の中で二人とも消えるの?
優希が振り返り振り返り、私を気にしながら帰って行く。隆成なんか振り向きもしないわ、薄情者~
無言のままの櫂をとぼとぼ追った。
こんな怒ってるお兄ちゃんは久々だ。元々おこりんぼだから小学生の頃は結構あったけど。
「並んで歩け」
「あ、うん」
「お前が転んでも助けられない」
それでも気にしてくれるのは、結局私の事ばかりだ。
「お兄ちゃん」
「……」
「ごめんなさい」
「いいよ」
夕暮れの道を二人でゆっくり歩く。
本当は手を繋ぎたかったけど、今日は二人とも荷物がいっぱいだ。
櫂のお母さん、顔の傷見たら驚くんじゃないかな。本当に間が悪いわ。
櫂、お母さんになんて言い訳するんだろ。
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