声優の理想と現実

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 あるオーディションに行ったとき、私は例のごとくガチガチに武装していた。  しかし、武装しているにも関わらず、情けないことに緊張しまくり、喉はしまり、演技が出来たかどうかもあやふやな状態だった。マガイモノなのだから、当然だったのかもしれないが。  これはダメだな…と思っていると。  私の次に、何も飾ってない自然体の女の子が出てきて、思わず釘付けになった。その子の全身から、言葉の端々から「お芝居楽しい!私は絶対声優になるんだ。」という輝きを見たからだ。  私が夢を追っていた頃のようなキラキラした輝きを、その子に見た時に…私はダメだと、自分で自分を諦めてしまった。  何をやっていたんだろう。と思った。  無駄に武装して、人に良く見られようなんて、そんなヤツはいらないのだ。  純粋にお芝居が楽しくて。声優になりたくて。いつの間にその原点すら私は忘れてしまっていたのだろう。悲しくて、辛くて、消えてしまいたくなったのだ。  自分が醜く、汚いものだったとしても。  それ以上の喜びも楽しさもあったはずなのに。  キラキラ輝く夢の中に、確かに居たはずなのに。  自分で台無しにしてしまったんだ。
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