シマッタくん、入学

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コータが振り向いて、「シマッタくーん」 と声に出さずに、口の形だけで言う。 俺も声に出さずに返す。 「うるせーんだよ、この垂れ目!」 その時ひじを、右からちょいっと突かれた。 んあ? なんだ? 隣を見ると、女子と目があった。 彼女は、はにかみがちにニコッと笑い……声をひそめて、 「苔、いいと思うよ」 と言った。 おおうっ?! 俺は、隣の席の彼女を二度見した。 髪の毛。あごまでのつややかボブ。 目ん玉。キュルンと上目遣い。 くちびる。ピンクでプルップル。 ……可愛い。可愛いじゃないか、この女子。 しかも苔のことを、いいって言った。いい奴だ!
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