39人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
*
草食動物の群れみたいな、みんなと同じモスグリーンの制服の波に乗って、帰り道をテクテク歩く。
横を歩いているコータが
「なあなあ、うちのクラス、誰が一番可愛いと思う?」
と聞いてくる。
「や、えっと……」
さっそく隣の席の女子が気になる……とは言いにくい。
「あ、うっそ。何その反応。気に入った子いたんだ? 誰誰?」
「いや、いねえよ」
「いやいや、出てるかんね、顔に。
分かっちゃうよ。早く吐いて楽になろうぜ」
コータが、ニヤニヤ俺の顔をのぞきこんだ。
買ったばかりの定期を、バシッとタッチして改札を抜ける。
ホームに出ると、ひとりポツネンと突っ立っている、チビッコこい女を見つけた。
この追及を逃れるのに、ちょうどいい。
「ルリィー」
片手をあげて名前を呼ぶと、従順な子犬のように走って来た。
デコが全開。
肩まで伸びた天然パーマが、フワリと揺れる。
ルリ――高地瑠璃も、もう一人の幼なじみだ。
コータが、苦笑しながら言う。
「なんだよ、ルリちゃん、ぼっちですか?」
「ぼっちだよ、うわーん」
ルリはカバンを、勢いよくコータにぶつけた。
「痛って。ルリちゃんのA組はどんな感じ? 誰かかっこいい子いたあ?」
コータが尋ねる。
「うーん。まだよく分かんないや」
「ま、俺よりカッコいい子はいないよね」
「ウン。コタくんよりは、みんなカッコよかったよ」
最初のコメントを投稿しよう!