シマッタくん、入学

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* 草食動物の群れみたいな、みんなと同じモスグリーンの制服の波に乗って、帰り道をテクテク歩く。 横を歩いているコータが 「なあなあ、うちのクラス、誰が一番可愛いと思う?」 と聞いてくる。 「や、えっと……」 さっそく隣の席の女子が気になる……とは言いにくい。 「あ、うっそ。何その反応。気に入った子いたんだ? 誰誰?」 「いや、いねえよ」 「いやいや、出てるかんね、顔に。 分かっちゃうよ。早く吐いて楽になろうぜ」 コータが、ニヤニヤ俺の顔をのぞきこんだ。 買ったばかりの定期を、バシッとタッチして改札を抜ける。 ホームに出ると、ひとりポツネンと突っ立っている、チビッコこい女を見つけた。 この追及を逃れるのに、ちょうどいい。 「ルリィー」 片手をあげて名前を呼ぶと、従順な子犬のように走って来た。 デコが全開。 肩まで伸びた天然パーマが、フワリと揺れる。 ルリ――高地瑠璃(たかちるり)も、もう一人の幼なじみだ。 コータが、苦笑しながら言う。 「なんだよ、ルリちゃん、ぼっちですか?」 「ぼっちだよ、うわーん」 ルリはカバンを、勢いよくコータにぶつけた。 「痛って。ルリちゃんのA組はどんな感じ? 誰かかっこいい子いたあ?」 コータが尋ねる。 「うーん。まだよく分かんないや」 「ま、俺よりカッコいい子はいないよね」 「ウン。コタくんよりは、みんなカッコよかったよ」
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